第2回 本当はどう思ってるの?前回は自分の本当の気持ちを知ることの意外な難しさと自分自身と対話することの大切さについてお話しました。今回は他人の気持ちを知る方法について考えてみましょう。気持ちを見分けるのは、そもそも難しい子供にプレゼントをあげる時、「ありがとう」と言う満面の笑顔に癒されます。子供の気持ちに嘘はないと思う。だって、プレゼントを買う前に何が欲しいか聞いてるんだから。でもねー、サプライズプレゼントともなると、なかなか相手の気持ちを量りかねるんですよね。「はい」と言って包装紙に包まれたリボンのかかった箱を渡された時。その時の嬉しさと期待が入り混じった相手の表情。そして包みの中から姿を現した箱を開けた時、「ありがとう」の笑顔にもし一瞬でも戸惑いが見られたら、きっとあなたは見逃さないでしょう。何しろこっちも一か八かの賭けをしてるような気持でプレゼントを買っているので、普段ぼんやりしてる人もそんな時だけは妙に観察力が向上します。「あれ?ちょっとイメージと違った?」と言っても「そんなことはないよ」と大抵は返してきます。これがまた夫婦ともなると「こんなもの買って勿体ない。現金の方が嬉しかったのに」なんてやり取りになる場合もありますけど。あ、脱線しましたね。「そんなことないよ」と言う言葉が本当かどうかわからない、そこで今度は自分が悶々とする。そんなことってないでしょうか。他人の気持ちを量るのは、難しいですよね。なんだか「ありがとう」の一言にも大・中・小や松・竹・梅があるように思えてしまいます。大学生と「どんなカメラが欲しい?」という話題で話していた時のことです。「カメラが欲しい」と言った学生がいました。相手を写すとその人の自分に対する好感度がわかる、そんなカメラだそうです。いいねえ、そんなカメラ欲しい!つまりそれだけ相手の気持ちを見分けるのは難しいってことだし、でも知りたくもあるってことですよね。相手の気持ちを知る方法とは?どうしたら相手の本当の気持ちがわかるんだろう?一番簡単なのは本人に聞くことでしょう。「私の買った財布、嬉しかった?」と聞いてみたとします。「うん、嬉しかった。ありがとう」そう言われたら、きっとその人は喜んでいるに違いない。言葉通りに解釈すればそうなりますよね。でも、私は疑い深いので『それが本当なら使ってるはず』と内心思います。そして次に買い物をする時にその財布を使っているかどうか確かめます。そこでまだ違う財布を使ってたら「あれ?使ってないじゃん」と言ってしまいます。「いや、もったいなくて簡単には使えないから」なんて答えられると「そうなのかな。本当は気に入らなかったのかな」とグルグル考え始めちゃいます。いけない、また脱線してしまいました。「嬉しかった」の言葉が本当かどうかわからないので、行動で確かめようとしたわけです。会話で確かめる人の本当の気持ちを理解するのに、大きく2つの方法があります。ひとつは会話で確かめる。もうひとつは、行動で確かめる。まず会話で確かめることを考えてみましょう。「軽井沢に行きたいな」そう誰かが言ったとしたら、あなたは「ああ、この人は軽井沢へ行きたいんだな」と思いますよね。そうです。先ずはそこからですよね。でも、その人は軽井沢に行きたいんじゃなくて、緑が豊かな街に行きたいのかも知れません。そこで、言葉を足してみます。「軽井沢って良いところだよね。でもどうして?」すると「何となく人混みに疲れちゃって」と会話が続くかもしれません。もしそうなら、この人は軽井沢じゃなくても人混みの少ない静かな場所に行きたいのかも知れないな、と気づくことができます。そこで「軽井沢も最近は人がいっぱいだから、他の場所でもいいかもね」と話を進めてみて「そうだね」となれば、その人は軽井沢に行きたいわけじゃないことが大体わかります。こんなふうに、他人の気持ちに近づくにはその人の言葉に寄り添いながら、少し視点を変えて質問をしてみると、より話している人の気持ちに近づくことができます。その前提として、その人、またはその人の気持ちに関心があるという点が重要です。誰に対しても、本当の気持ちを知ろうとしたら疲れちゃいますからね(笑)行動で確かめるさて、もうひとつは行動を確かめる、でした。「お腹空いたよね~。今日はどこ行こうか」そんな時、多くの人は目であちこちのお店を探します。最近だとスマホ見る方が早かったりしますけど。これは気持ちが行動に現れるシンプルな例です。多くの場合、他人の気持ちは表情や行動に出るものです。言ってることとやってることが違う時は、大抵やってることに気持ちが表れています。本当の気持ちを知りたいな、と思ったらその人をよく観察してみると良いでしょう。行動はもちろん、表情や身に着けているもの、食べ方や歩き方、話し方といった仕草の中に本当の気持ちが隠れているかもしれません。気持ちを知るときに、本当に大切なことは・・・?今回は他人の気持ちを推し量る方法について書いてきましたが、最後に注意しておくべき大事なポイントがあります。それは、“人は相手を思いやる言動をとる”ということです。だからこそ、優しい嘘をつくこともあります。プレゼントした財布が本当は気に入ってなかったとしても「気に入ってるよ」と言うかもしれませんし、次の日から使ってくれるかもしれません。あなたを思いやって。そうだとすれば、言葉や行動で相手がプレゼントを気に入ってくれたかどうかを確かめなくても良いですよね。もしプレゼントが気に入ってなかったとしても、あなたのことは気に入ってるのですから。それこそが、相手の本当の気持ちなのではないでしょうか。さて、次回は仕事を通じた気持ちのやり取りについてがテーマです。仕事だからとビジネスライクに割り切って仕事をしていると「冷たい人」と思われたり、逆に一言添えるだけで「優しい人」と思われたり。ほんの少しの違いで相手の受け止め方が変わってしまいます。さて、そこをどうしたら良いのか一緒に考えてみましょう! 文:中西真人氏(M&R Consulting代表)1960年生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。 自動車メーカー、流通業、外資系コンサルティング会社を経て、1996年にM&R CONSULTING代表として独立。独立後は、顧客企業の課題の発見から解決までのプロセスを顧客と共有しながら進めるサービスが好評で、様々な業界の大手企業を顧客に持ち、信頼も厚い。また講演・研修では、「なるほど」とうなずける裏付けのある内容と論理的な解説あり、工夫されたワークにより、明日から即実戦に活かせると評判も高い。JASPAでは、トレーニング動画「タイムマネジメントー自分時間の創り方ー」で講師も務めている。<主な著書>『実務で役立つプロジェクトファシリテー ション』 (翔泳社)『プロジェクト・マネジメント』 (かんき出版/共著)『思いどおりにお仕事を進める対人関係トレーニング』 (かんき出版)