みなさん、こんにちは。気象予報士の松本です。私は民間気象会社に勤務しています。以前、アパレル業界のお客様から気象情報の利活用について相談されたことがあります。消費者はファストファッションの影響で、流行よりも気温の実態に合わせて服装を選択する傾向があるようです。そのため課題になってきたのは、気温の実態に合わせた季節の終わりを判断して、次の季節の売場をつくることでした。お客様にとって次の季節の服装は「いつ(季節の始まり)」選ぶのか、また「どこで(地域気象特性)」着るのかを想定していくことがポイントです。冬は「いつ(季節の始まり)」と言えば、「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう。Slient night, Holy night」♪とクリスマス・イブの曲が店内に流れる12月頃、私は冬の到来を感じます。この曲は、1988年にJR東海のクリスマス・エクスプレスのCMソングに採用されました。「どこで(地域特性)」と言えば、気象予報士の観点では「Slient night(静かな夜)」から、日本海側では「Blizzard(暴風雪) night」のため、クリスマス・イブは太平洋側の雪の降り方をモチーフとした楽曲と妄想しています。お伝えしたいことは、日本の冬は、日本海側と太平洋側に天候の違いが明らかになります。つまり、地域特性によって服装が変わります。お客様にとって服装選びは、「いつ(季節の始まり)」に加えて、「どこで(地域特性)」がポイントになりますね。近年、暖冬傾向で冬服の売上に貢献する寒さが期待できない時代になってきました。日本の冬の特性を理解して、お客様の「いつ」、「どこで」の気象情報を確認すると良いでしょう。では、今年の冬を確認していきます。2025年9月22日発表された寒候期予報(12月~2月)では、平年並みの気温が予想されています。近年の温暖化傾向を考えれば、今年は冬らしい寒さが訪れる可能性があります。二十四節季で「冬の始まり」を考えよう!アパレル業界では、二十四節季(にじゅうしせっき)を基準に季節感のある売場づくりを行う企業があると聞きます。二十四節季とは、太陽の動きをもとに1年を24の季節の節目に分けたものです。下表のように、太陽の動きとなる、春分(3月20日頃)、夏至(6月21日頃)、秋分(9月23日頃)、冬至(12月22日頃)を起点に分けています。では、冬の始まりはいつでしょうか?天気予報では「暦の上では冬ですが・・・」というと、立冬(11月7日頃)が始まりとなります。また、先に述べた「冬至(12月22日頃)も始まりの候補の一つです。さらには、気象庁が発表する冬の予報(寒候期予報)は12月~2月のことを指します。12月1日が冬の始まりでしょうか。冬を伝える言葉は様々ですが「冬の始まり」は、この日というのは無いのが正解と言えそうです。【二十四節季および金沢と東京の気候特性】平年値:1991年~2020年の30年間平均値アパレルでは冬の始まりは木枯らし1号が吹く頃の立冬か。 立冬(11月7日)の時期は、木枯らし1号が吹きやすくなります。季節が秋から冬へと変わる時期に、初めて吹く北よりの強い風(8m/s以上)のことを言います。実は、東京地方と近畿地方のみに発表されるため、冬の始まりの合図として気づきにくいかもしれません。この木枯らし1号が吹くと金沢などの日本海側で雪が降りやすくなります。一方で、東京などの太平洋側は乾燥した晴天となりますが強い北風が吹きます。風速 1 m/s 上がるごとに、体感温度はおよそ 1℃下がります(湿度の低さも関係)。つまり、木枯らし1号が吹くと、体感温度がぐっと下がり「冬の始まり」を感じます。冬の到来前に売場には冬物を揃えて気温よりも体感温度を重視した売場づくりがポイントです。 例えば、グラフ上に最高気温15℃で補助線を引いてみると、金沢市は雨の降る日が多くなり11月中旬頃となります。一方で、東京は晴天となり気温が高くなるので11月下旬頃と遅くなります。しかし、11月下旬前でも冷たい雨や木枯らし1号(風速8m/s)のような強い風が吹くと、最高気温が15℃でも風速1m/sごとに1℃気温が下がるため、体感気温は10℃を下回ります。一般的に気温10℃前後で「冬を感じ始める」と言われます。この時期は天気予報で最高気温15℃でも、風速と湿度を加えた体感温度をチェックしてお客様に冬の始まりを伝えましょう。▼体感温度の計算サイトでチェックhttps://keisan.site/exec/system/1257417058日本海側と太平洋側の服装選び2015年に北陸新幹線の東京駅・金沢駅の区間が開業しました。もし、この区間でのクリスマス・エクスプレスのCMがあった場合、俳優の服装選びは難しかったことでしょう。気候に合わせて「防寒重視、おしゃれ重視」を切り替えるのが日本の冬の服装選びのコツです。天気と服装の関係を理解して実態の天候・気温の実態に合わせた服装の提案を心がけましょう。【日本海側と太平洋側の気候特性に対応した服装選び】項目日本海側(金沢市等)太平洋側(東京地方等)気候特性多め、寒い、風強い晴れ多め、乾燥、朝晩冷え込むアウターダウン(ロング・防水)ウールコート、ショートダウンインナーヒートテック+ニット、フリースタートルニット+カーディガン等靴防水ブーツ(滑り止めあり)スニーカー、レザーシューズ小物ニット帽・手袋・耳当ておしゃれマフラー・手袋普段、雪が降らない東京は大雪後の転倒防止の対策!東京都心では、1月~2月を中心に雪が降る日があり、大雪となる年もあります。大雪に備えた防雪重視の服装や、次の日は路面凍結により歩行の転倒事故が多くなります。慣れない雪道のため、靴は「滑りにくさ」+「防水性」が良いでしょう。なお、大雪警報は、金沢市で降雪の深さ25cmに対して、東京都心で降雪の深さ10cmです。東京都心のような普段雪の降らない地域では降雪の深さ10cmでも交通機能が麻痺します。お客様の旅行や出張のシーンも想定して、2つの地域の服装選びを行いましょう。【注】本ページ内の画像の出典:Phot AC(ChatGPTでイラスト化)文:松本 康児(気象予報士、防災士、中小企業診断士)1999年に気象予報士を取得。現在、民間気象会社に勤務しており、主に地方自治体や民間企業に対して気象情報を活用した水害リスクの低減を行っています。また、地元石川県で起こった能登半島地震および水害による複合災害に対して、復興支援のために産学連携による関係人口創出プロジェクトに取り組んでいます。