前編では自分の力で変えられるものと変えられないものを「見極める力」、そして当事者として「向き合う力」「実践する力」の大切さをお話しさせていただきました。それらの力を身に付けるための学び方があるとしたら、皆さんの中にどのようなお考えが生まれたでしょうか。さて、私の考えをお伝えする前に、少しだけ違う話をさせていただきますね。1990年ぐらいからVUCA(ブーカ)という言葉が囁かれ始めたことはご存知でしょうか。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)。これらの4つの単語の頭文字をとってVUCA の時代と言われています。一言でいうと「未来の予測が困難で、想定を超える状況が次々に起こり続ける」ことが日常になる、って感じでしょうか。ここ数年を切り取ってみても、2020 年から始まった新型コロナウイルスとの闘いは正しくVUCA を象徴する出来事でしたし、最近の異常気象、ゲリラ雷雨、線状降水帯、迷走する台風、気温が沸騰する日本、、、私たちは予測不能な状況をなんとか乗り越えながら生きてきました。A I も私たちの予測を超えて進化し続けており、私たちの生活を豊かにしてくれる一方で、思い掛けないトラブルの元凶になったりもしています。情報の漏洩、プライバシーの侵害、、倫理観の低下、それらによって引き起こされるフェイクニュースやネット広告詐欺などなど。。。皆さんは対応できているかもしれませんが、高齢者を中心に思いもしなかった落とし穴に嵌っている人がいます。このようなVUCA と呼ばれる状況は決して終わったわけではなく、これからも更に複雑で変化が激しい事象は起き続けていくのだと思います。その上に、更に危惧する状況が起きていると言われているのでそれもご紹介したいのですが、VUCA を長く経験した私たちの中にBANI(バニ)と呼ばれる現象が忍び寄っているということです。それではBANI とは何でしょうか?Brittle(脆弱性)、Anxious(不安)、Non-Linear(非線形性)、Incomprehensible(不可解さ)。これらの頭文字を繋げてBA N I と呼ばれているようです。V U CA の時代を生きてきた私たちは、知らず知らずの内に弱くて脆い存在になりつつあり、それに伴い様々な場面で不安を抱えるようになっています。努力すれば必ず報われるという保障もなく、起きてくる現象も不可解なものが増えてきます。V U C A とB A N I がお互いに増幅し合いながら私たちの未来を混沌とさせていく時代。それらを乗り越えるために、私たちは3つの力を学ぶべきだと改めてお伝えします。すなわち、自分の力で変えられるものと変えられないものを「見極める力」、そして当事者として「向き合う力」「実践する力」が大切だと言うことです。まずは「見極める力」。自己肯定感、自己効力感を失うことにより、自分の力で変えられるものさえも「できない」で済ませてしまい、誰かに、そして何かに依存してし過ぎてはいませんか?偏った媒体、都合の良い言葉、限られた範囲にいる人から集めた情報を鵜呑みにし、自分の脆くて弱い姿を晒すことを恐れて、拙速に答えを出そうとしていませんか。次に「向き合う力」。次々に降りかかってくる問題・課題を避ける、跨ぐ、先送りする、誰かへ安易に託すことを覚えてしまい、自ら問題に立ち向かう勇気を失っていませんか。うまくいかなかった時に傷ついてしまう自分に会いたくなくて、知らず知らずの内に行くべき方向から離れてしまってはいませんか?最後に「実践する力」。継続は力なり!ってことは分かっているものの、なかなか成果に結びつかない。なぜそうなってしまうのかの根本原因が不可解で理解できない。ましてやどんなに努力をしても、投資した時間や労力通りの結果が手に入らない。だから、自己肯定感や自己効力感を下げてしまい、楽な方へ、楽な方へと進んでしまう。勘の良い方はお気づきになられたかもしれませんが、この状況こそがVUCA とBANI に絡め取られた負の無限ループではないでしょうか。残念ながらVUCA の流れを私たちの力で止めることは難しいかもしれませんが、BANI に関しては自分たちの内面の意識を変えることで制御できるかも、と私は感じています。洒落ではありませんが、BANI(バニ)へ抗うためにはニバ。。。すなわち「ニーバーの祈り」をこころもちにして生きることこそが有効なのではないかと考えています。「神よ、変えることのできるものについてそれを変えるだけの勇気をわれに与えたまえ。変えることのできないものについてはそれを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ一日一日を生き、この時をつねに喜びをもって受け入れ、困難は平穏への道として受け入れさせてください」まずは皆さんの半径5メートル以内に起きている小さな日常へ意識を向けて、それらを自分の力で穏やかなものへと変えることから始めてみませんか?文:内田圭介(ブランニュー株式会社代表取締役)1965年、⼭⼝県下関市⽣まれ。キリンビール(株)に26年間勤務し、2014年4⽉に独⽴・開業。在職中は営業⼀筋に様々な得意先に対して課題解決をベースにした共創型セールスを実践するとともに、社内組織改⾰プロジェクトメンバーの⼀員として共創型リーダーシップを発揮した組織開発に貢献する。現在は、コーチングや様々なコミュニケーション術をベースに、『成功の技術』と呼ばれる「原⽥メソッド」や、最新のリーダーシップ・イノベーション⼿法である「U理論」を全国に伝え拡げる活動を推進している。『未来を切り拓く⾃⽴型⼈間・組織の育成を通じて、全ての⼈びと、あらゆる組織の 変容と成⻑に貢献する』ことを研修のビジョンとして掲げている。