みんなが気持ちよく働けるお店にしたい、と日々マメに目配りしたり声をかけたりしているのに、突然の退職宣言。どうして気持ちが伝わらないんだろう?とがっかりした経験はありませんか? 「ほめてもあまり反応がない」「成長意欲が感じられない」そんなスタッフがいるとしたら、解決策は“アウトプット”にあります。なぜなら人から指示されたことや要求されたことよりも“自分の口から出た言葉”に、人は一番大きな影響を受けるからです。 そこで今回は、スタッフのアウトプットを促し、成長意欲を引き出す「質問ぼめ」の方法をお伝えしましょう。たとえば「お客様の心をつかむのが上手いよね」とほめたとしましょう。本人が自覚していなかったなら、自分の強みを知ることができ自信につながることでしょう。けれども本人がすでに認識している場合はどうでしょうか?「ありがとうございます!」と口では言いながらも、内心では『だから売上No.1になれてるわけだし、もっと時給上げてもらってもいいんじゃない・・・?』と思ってしまうかもしれません。そこでさらに成長意欲を持ってくれるよう、ぜひ“質問ぼめ”を活用して欲しいのです。例を挙げてみましょう。店長:「どうしたら、〇〇さんみたいにお客様の心をつかめるようになるのかなぁ?」スタッフ:「えーっ?私お客さんの心つかんでますかねー?うーん・・・何かやってることがあるとすれば・・・その方のファッションとかバッグとか外見的な特徴を見て、きっとこんなライフスタイルの人じゃないかなぁと想像するのが好きっていうのはありますね。」店長:「へえ~想像するんだ。それでどんな風にアプローチするの?」スタッフ:「その人の好みやこだわりが見えてくるので“肌触りとか着心地を大事にする人なんじゃないか”とか“素材の質感とか品格の高さを重視してるんじゃないか”という風に考えて提案する商品を選んでいます」このように「質問ぼめ」を用いることで、本人が日ごろから創意工夫していることをアウトプットしてもらうのがポイント。スタッフが無意識のうちに実践していることを整理する機会になるので、本人にとってプラスになるのはもちろんのこと、他のスタッフとも共有することで、お店の売り上げアップにつながる貴重なノウハウも手に入ります。また、相手の価値観にあわせて着目ポイントを選ぶとより効果的です。たとえば前述の「どうすればお客様の心をつかめるようになるのかな?」という質問は人間関係を重視するタイプに効果的であるのに対して、ロジカルな結果重視タイプには「どうすれば〇〇さんみたいに常に目標を達成できるようになるのかな?」といった質問が効果的です。スタッフをよく観察して、それぞれの長所やこだわりに言及することが重要なポイントになります。最後にひとつ、意外と無意識にやってしまいがちな「NGあいづち」についてご紹介しましょう。プライベートでこんなやり取りを経験したことはないでしょうか?あなた:「この人最近よくテレビに出てるね。きっと話が面白いからひっぱりだこなんだろうなぁ」パートナー:「いや、そこまでこの人って話面白くないでしょ。性格がいいから声がかかるんだよ」あまり愉快な受け答えではありませんよね。もし“自分の意見と違うな”と思ったとしても・・・「たしかに話面白いよね。でも僕が思うにきっと性格がいいから可愛がられるんだと思うんだよね」という風に、まず共感的なコメントをした上で持論を述べた方がグンと好感度が上がります。これをスタッフとの会話に置き換えるとすると、たとえばこんな感じです。スタッフ:店長、やっぱりうちの店の一番のウリってデザイン力ですよね。あなた:いや、そうじゃなくて、トレンドをいち早く採り入れているところでしょう。スタッフが店長に対して自ら話しかけてくれることは何よりありがたいこと。「いや」「そうじゃなくて」というあいづちは、不快感を与えてしまい、あなたに話しかける気力を奪ってしまいかねません。「デザイン力は素晴らしいよね。それにトレンドを採り入れるスピードもウチの大きな売りだと思うな」といった受け答えが望ましいです。質問ぼめ、そして共感的なあいづちを用いて、話しやすい環境を提供しましょう。スタッフのアウトプットが促されることで、自ずと成長意欲が湧いてくるものです。文:谷口祥子(ほめ方の伝道師。株式会社ビィハイブ 代表取締役)コミュニケーション下手で対人恐怖症に陥った20代後半。30代半ばでコーチングに出会い人間関係が激変。中でも“ほめること”で世界が大きく変わったという体験から、ほめ方の伝道師として活動。「みんなが楽しみながら可能性にチャレンジできる社会づくり」を目指し、自身が体系化した“ほめ方7つの極意”や心理学に基づいたタイプ別のほめ方を研修で提供している。著作は「あたりまえだけどなかなかできない ほめ方のルール」(明日香出版社)、「結果を出す人のほめ方の極意」(講談社)、「図解入門ビジネス コーチングの手法と実践がよ~くわかる本」(秀和システム)など13冊。公式サイト:https://bee-hive.biz/