どんな人にまた会いたいと思うのか「また会いに行きたい」と思う人を思い浮かべてみてください。どんな方が思い浮かびますか? 1人でも複数人でもかまいません。思い浮かべたその人の、どのような要素に惹かれて「また会いたい」と思っているのかを考えてみましょう。たとえば、「その人の笑顔を見るとホッとする」「話を聞いてくれる」「共感してくれる」「話をするのが楽しい」「力になってくれる」「人として認めてくれているのがわかる」など、いくつか挙げられるのではないでしょうか? 私たちは誰でも、人に受け入れてほしいと思っていますし、人から認められたいと思っています。それらの欲求を満たしてくれる人に会いたくなるものなのです。伝説の販売員の「また会いにきてもらえる」秘密人の30倍売る伝説の販売員だったTさんが、売り上げの秘密を教えてくれたことがあります。彼女は「目に入るすべての人を好きになる」ということを心がけていたそうです。好きになると、好きになったその人が自分のお店に入る入らない関係なく、幸せを願っていたのだそうです。自分が相手を好きになると、その方にとって居心地のいい居場所になります。その方が幸せを感じられるように会話を楽しむと、会話がはずみ、相手の幸せに必要なアイテムを提案できるのだそうです。それが自分のお店にあろうがなかろうが関係なく、相手の幸せに必要なアイテムを一緒に探すと、うれしくなって買ってくださり、たくさん買ってくださるお客様がどんどん増えて、その結果として売り上げがあがるのだと教えてくれました。何にフォーカスするのかが大事で、売り上げを上げることにフォーカスするよりも、目の前にいるお客様を好きになって、幸せになって帰っていただくことにフォーカスをすることが大事なのだと、Tさんは教えてくれたのです。ファーストインプレッションという言葉がありますが、初対面の印象は3秒から5秒で決まると言われています。3秒から5秒というと、まだ会話がはじまっていないうちか会話が始まったとしても冒頭で印象が決まることになりますよね。究極の印象とは、どのような表情でいるのか、その表情の奥にあるその人の心の状態で決まるといっても過言ではありません。あなたがお客様の立場だったら、眉間にしわがよっているような販売員さんがいたら、心のどこかで構えてしまうのではないでしょうか。穏やかな笑顔でやさしく微笑んでいる販売員さんだったら安心して商品を見ることができるのではないでしょうか。Tさんの言っているお客様を好きになるということは、好きな人を見るときは自ずと笑顔になりますので、その笑顔が心地よさを提供し、販売につながっているということなのです。「そうは言っても、好きになれない人はいないの?」と質問すると、Tさんの答えはまたしてもユニークなものでした。「嫌いな人というカテゴリーを入れるキャビネットをつくらなければいい」と言うのです。どういうことかというと、嫌いな人というキャビネットがあるから、嫌いだと思う人を振り分けてそこに入れたくなるけど、なければそこには入れられないので、「少し難しめの人」と認識すれば嫌いにはならないのだと教えてくれました。認識をうまく調整すれば、「この人は嫌い」ではなくなるということですね。相手のプラス面を見つける心理学ではフレームを変えるリフレーミングという技があります。マイナスのメガネで見ると短所になるけれども、同じことをプラスのメガネで見れば長所にも見えるということです。たとえば、イライラしやすい方は、短気で怒りっぽい方という見方もできますが、プラスのメガネで見たら、どのように見えるのか想像してみてください。答えはいくつもありますので、複数の答えを見つけるのがポイントです。「たくさんのことをしているので時間が足りない方」「理想が高く、志が高い方」「高い水準で完璧を追い求めていらっしゃる方」などと見ることができるかもしれません。ここでは正解を見つけるのではなく、そういう可能性もあるというものを見つけてみるのです。そうやって意味づけを変えられるようになると、苦手意識を軽減することができます。私たちが「喜び」「充実感」「達成感」を感じられるときは、自分のことも相手のことも認めることができるときなのです。「自分のこんなところがダメ」「あの人のこういうところがイヤ」と思いながら、喜びや充実感は感じることができないものなのです。ではどうすればいいのでしょうか?それは、自分の短所だと思うところを、プラスのメガネで見ながら長所として受け入れていくこと。相手に対しても同じように、たくさんの長所を見つけていくことです。幸せを見つける心のメガネは、誰でも持っているのですから、使わなければ損ですよね。このことは、お客様との関係だけではありません。仕事上の関係性(上司、同僚、部下)や家族や友人との関係性においても同じことが言えます。イヤなところが見えれば、嫌悪感を抱いてしまいます。嫌悪感を抱きながら良い関係性を築くことは難しいですよね。相手の素敵なところが見つけられれば、相手のことを少し好きになります。好きだと思う相手となら、良い未来をつくっていけそうですよね。 あなたの職場や家庭が今よりも楽しくなる秘訣は、プラスのメガネを使いながら、自分や相手のことを認めることと、好きになることなのです。あなた自身がまた会いたいと思われる存在になるには、目には見えないプラスのメガネを常に使いながら、内面から醸し出す笑顔によって、相手にとっての心地よさをつくることに他ならないのです。文:加藤史子(企業研修講師/交流分析トレーナー/米国NLP協会認定トレーナー/パペット・コミュニケーショントレーナー)筑波大学体育専門学群卒。千葉大学大学院学校教育臨床修了。一般企業勤務の傍らで、世界中の教育施設の視察や教育内容を研究し、心の教育の必要性に目覚める。その後、社会教育研究所や千葉大学大学院などで心理学を学び独自のプログラムを開発。現在は、企業研修講師として「新しい時代の対人関係スキル」や「ビジネスコミュニケーションスキル」などを行う。全国の学校やスポーツスクール、塾などをまわり、「なりたい自分を手に入れる心のスキル」などのワークショップや講演活動をしている。また千葉県中学野球連盟特別講師として全国のスポーツ少年や指導者向けのメンタルトレーニングも行う。ロンドンオリンピック銀メダリスト平野早矢香選手のメンタルトレーナー。