人生が長期化するなか、定年後も働くことが珍しくない時代になってきています。キャリアの初期である20代は、企業などに就職してフルタイムで働く人が多く、仕事を覚えて経験を重ねていく時期といえます。女性の場合、個人差はありますが、30代で結婚・出産というライフイベントを迎え、育児休業を取ったり時短勤務をしたりするなど、ライフに比重を置きたいと考える人は多いかもしれません。40~50代になると、人生の折り返し地点を迎え、自身のキャリアや将来への不安や葛藤が生じる人も少なくありません。体力の低下や女性特有の体調変化などの健康課題もあれば、親の介護で仕事との両立をどう図っていくかなど、さまざまな課題が生じてくる時期でもあります。 さらに、定年で仕事に一区切りをつけるか、その後も働き続けるかなど、将来の方向性について意識を向ける人も徐々に増えていきます。ちなみに、定年後は同じ企業で再雇用され、嘱託社員等として働くケースが多いですが、転職・再就職や独立・起業といった選択肢もあります。働くというと、ひとつの企業に属して、ずっとフルタイムで仕事をすることが「正解」であるかのような風潮がありますが、必ずしもそうとは限りません。ライフステージに応じて、求められる役割の変化、自身の価値観や体調の変化などがあるように、働き方を見直していくことはごく自然なことです。雇用契約で働く場合も、様々な選択肢があります。たとえば、短時間勤務制度や働く時間を柔軟に選べるフレックスタイム制、リモートワークや週休3日制、副業・兼業など、企業によって柔軟な選択肢が可能な職場もあります。また、これまでの経験やキャリアを生かして、フリーランスとして独立したり、信頼する仲間と共同で起業したりする選択肢も考えられるでしょう。働き方は決してひとつではありません。職業人生が長期化していくなかで、多様な選択肢の中から自分に合ったものを選び、自分自身でデザインしていく。こうした意識を持つことが、今後さらに求められていくでしょう。お金の攻めと守りで人生を豊かに そのとき、お金との向き合い方も大事になってきます。生活していくためには一定の経済力が必要になりますが、働けない時期やこれまでのように給与が得られない時期もあるかもしれません。 たとえば、家族の介護で一定期間仕事から離れるときは、雇用保険の「介護休業給付金」がありますし、学び直しをしたいときには「教育訓練給付金」や「教育訓練休暇給付金」(2025年10月創設)などもあります。病気で働けないときは、健康保険の「傷病手当金」もありますし、仕事を辞めて仕切り直しを図るときには、雇用保険の「失業手当」(基本手当)もあります。実は、公的保険には、さまざまな給付金制度があります。毎月の給与明細書では、手取り額しかチェックしない、という人も多かもしれません。しかし、天引きされているそれぞれの保険料から、どんな支援を受けられることができるのか、いざというときに活用できるように知識を増やしておくことをおすすめします。また、働き方を見直すときに意識しておきたいのは、健康保険や年金といった社会保障にまつわることです。企業にお勤めしていると、すべて会社が手続きをしてくれるので、「特に考えたことはない」という人が多いのではないでしょうか。しかし、こうした保険・年金は、今の生活ばかりでなく、将来の暮らしにも大きな影響を与えます。いずれ仕事を引退するときがくれば、公的年金が老後の生活を支える経済基盤となります。そのためにも、働き方を見直すときは、社会保障に関してもしっかり考えておくことが大事になります。たとえば、フルタイム勤務からフリーランスに転身する場合、自身で国民健康保険や国民年金に加入するための手続きを行わなければなりません。支払う保険料も大きく変わってくると同時に、老後の年金が(同じ会社員のままでいるよりも)下がることになります。私的年金を増やすために、たとえばiDeCoに加入して将来に備えるなど、対策を講じていくことも検討したいものです。稼いで生み出すお金や投資などによる資産形成も大事ですが、自分自身を守るためのお金も欠かせません。攻めと守りの両輪で、豊かな人生を築いていきたいものですね。 文:佐佐木 由美子(社会保険労務士)グレース・パートナーズ株式会社代表。中小・ベンチャー企業を中心に、多様な働き方に関するコンサルティング等をはじめ就業規則や人事労務・社会保険面から経営を支援。女性の雇用問題にも積極的に取り組んでいる。ダイヤモンド・オンライン等の経済メディアに働き方やキャリア等に関する寄稿多数。ブログ「ワークスタイル・ナビ」では女性のライフ&ワークスタイル等について随時更新。■グレース・パートナーズ株式会社:https://gracepartners.jp/■佐佐木由美子のワークスタイル・ナビ:https://www.workstyle-blog.jp/