販売員を支える人たちシリーズ中村 早由里さんエルメス ジャポン株式会社 人事部 人材開発担当シニアマネージャー中村早由里さんプロフィール 大学卒業後、1998年にエルメス ジャポン株式会社に入社。販売職としてのキャリアをスタートさせる。 日本橋三越本店、伊勢丹新宿店に勤務。その後、社内公募制度により営業部に異動。営業担当として新潟・高松・鹿児島など全国の店舗運営に携わる。 2011年人事部に異動。現在は、人材開発担当シニアマネージャーとして、トレーニング、インターナルコミュニケーション、サステナビリティ活動に関わっている。“エルメス”を継承する人材を育てることが、一番のミッション人事として、今一番やらなくてはならないことは、世代が変わってもエルメスがエルメスであるために、次の世代を育てることだと思っています。若い世代も含めての人材育成ですね。私たちのいる業界は、お客様から教えてもらうことが多い業界だと思っています。もちろん販売のスキルや知識は、研修でも教えられますが、今は世の中にたくさんの情報が溢れているので、お客様の方がよくご存知のことも多いです。 ですから、お客様によい接客をしようと思えば、自然と知識も増えますし、提案力も上がります。そのためには、いかに自分のところに帰ってきてくれるお客様を作るのかという顧客育成力を培うことが、自分を成長させる一番の方法だと思います。何より、自分のところに帰ってきてくださるお客様がいれば、お客様が会いに来てくれるというのは、それだけでお店に来るのが楽しくなりますよね。そうしたことを話している販売員の方は、とてもキラキラしているように感じます。そんな販売員を育てることは、エルメスというブランドを継承していくために、必要なことだと思っています。変化する状況の中で、いかに自分自身も大事にしてもらえる環境づくりができるか顧客育成をするにあたっては、販売員の一人ひとりが、自分のお客様をどう作っていくかという方法などは、基本的に自主性に任せています。真面目な方が多いので、そうした環境では、つい頑張りすぎてしまうことが多いように感じています。 ですから、お客様と接している中で、ぜひ自分のことも振り返って欲しい。今の自分の働き方が、サステナブルかどうか、働き方に疑問を持ちながら働いてほしいと思っています。そして、人事としては制度などの面からサポートし、サステナブルに働いてもらえる環境を整えたいとも思っています。 また自己理解を深めることも、大切です。コロナ禍以降の販売は、今まで以上に難しいものであると感じています。お客様の価値観も多様化していますし、海外のお客さまも増えています。ですから、これからは自分の価値観や今までの成功体験や方法を疑うことも必要なことだと思います。もう、「今までと同じでいい」という時代ではないのです。 販売員の皆さんは、今いろんなお客様と向き合いながら接客・販売していると思いますが、それは確実にご自分の力になっていると思います。多様性を受け入れるということは、自分の考え方のクセや理解の仕方のどこに偏りがあるかを知ることでもあります。それは自分を理解することにつながり、最終的には自分の成長に繋がっていくからです。多様性ということでは、新卒社員の育成でも同じではないかと思っています。今までの育成の仕方に倣うということではなく、社員一人ひとりを見ながら、最善を尽くしていかなくてはならないと感じています。でも、成長の過程では失敗もしてしまうかもしれない。失敗したときにどうするかということを考え、実践できるようにするためには、周りの手助けが必要になってきます。いつも最高の状態を保っていることができなくても、そのときは誰かが助けてあげられるチームを作れるよう人事としても、サポートしたいと思っています。 エルメスの販売員は夢や希望、お客様がこうなりたいという変身願望をお手伝いする素晴らしいお仕事だと思います。ですから販売員がポジティブでいられるかどうかが、とても重要です。販売員の皆さんが、仕事をしているときがハッピーと思ってもらえるためにどうするか。いかに心と身体のエネルギーが満タンである状態を作ってあげられるか、そうした環境を与えられるかは、人事としての大切な仕事だと思っています。 販売はアートな仕事。自分も楽しみ、お客さまも楽しませて欲しい。 販売はアートなお仕事だと思っています。アートが人の気持ちや心を動かすものであるとするならば、まさに販売はお客様の心を動かすもので、アートだと言えるでしょう。そこに正解はないと思いますし、受ける側によって様々に解釈されるものです。だからこそ、創造的であり、素晴らしいのだと思います。 販売員の皆さんへメッセージを送るとすれば、そうしたアート=販売で、毎日お客様を楽しませていただいているので、ぜひご自身も楽しませる、おもてなしする時間を作って欲しいと思います。特別な楽しみであったり、おもてなしをされる側に回ってみるなど、アートを見る側にもなってみて欲しいのです。そして、お店にいる間は、たくさんのお客様を楽しませる存在でいて欲しいと思います。文/構成/編集:馬場真由写真:清水洋延