コロナ禍で急速に様々な部分でデジタル化が進み、接客でもオンライン接客など、新しい方法が導入されてきました。そうした中でも、チャット機能、LINEなどのメッセージアプリやSNSと連携した文字でのやりとりを中心とした接客は、ECサイトからの購入率増加とともに、その機会も多くなってきていると思います。 こうした文字ベースでの接客は、気軽に問い合わせができるため、ECサイトでお買い物をする際の「自分の場合はどうなのか」という点を補完することができます。ですが、気軽な半面、売るという立場から考えると、「文字のみ」という制約の中で、お客様の疑問に答え、ニーズを引き出し、ご提案から購入につなげることは、実は通常の接客よりも、難易度が高いと感じるのも、正直なところではないでしょうか。 このコラムのシリーズでは、文字でのコミュニケーションで、いかに購入につなげるかという「書く接客」がうまくいくヒントについて、いくつかご紹介していきます。今回は、「書く接客で意識したい会話のテンポ」について、ご紹介します。 質問は、はじめからたくさんしないよいご提案をするには、お客様から情報を引き出すために、様々な質問をする必要があります。ですが、書く接客の場合は、はじめにたくさん質問をしない方がうまくいきます。 これはお客様の気持ちになってみれば、十分理解していただけるかと思います。書く接客の場合、使用するツールは様々でも、「チャット形式」でのやりとりがメインになるというのは、同じではないかと思います。このチャット形式の場合、会話のテンポ(リズム)が非常に重要になってきます。テンポが悪いと、すぐチャットは終了してしまうからです。 会話のテンポを生み出すには、お互いに自分の言いたいことがバランスよく言えているというのが、大切なポイントです。お客様と会話が盛り上がるときを思い出していただくと、「そうそう!」という場面が思い出されませんか?これは、お互いに同じことを思っていたことがわかって、嬉しくなった瞬間によく見られる場面だと思います。こうした状態になるのは、お互いに思っていることを言い合ったからこそ、「そうそう!」という感情を生むわけです。ですから、一方的に質問されるばかりだと、こうした感情を生み出すことは難しいのです。 さらに、知りたいことがあって問い合わせをしたにも関わらず、その答えを得るまでに販売員からの質問をたくさんされると、いつまでも自分の知りたいことがわからず、苛立ちを感じてしまい、マイナスの感情を与えてしまうことになります。問い合わせの序盤、つまりお買い物を始める序盤でマイナスの感情を感じてしまうと、やはりご購入までつながる確率は低くなりますよね。 こうした場合、お客様のお問い合わせ内容にまずは一旦一般的なお答えを返し、その後で、もっとよい回答をするためにという理由を添えて、改めてご質問を返すのがおすすめです。 例えば、以下のイラストのような会話をイメージしてください。この会話はあくまで一つの例ですが、お客様からのご質問や回答に対して、まずはすぐそれに対応する回答を返しています。その上で、質問を1~2つしています。そして、その上でなぜ質問したいのかという理由を簡単に添えた上で、また質問を1~2つしています。 こうしたやり取りをすることによって、お互いに会話をすることができ、チャットといえども「会話のテンポ」が生まれます。会話のテンポがよければ、心地よさを生み、長くチャットを続けることができるようになります。 意外と重要な受容のことばもうひとつ、会話のテンポを生みだすヒントが「受容のことば」です。イラストの会話のどの部分が、受容のことばかおわかりでしょうか?イラストの会話例だと「そうなんですね」や「そうでしたか」「ありがとうございます」などが、受容のことばです。お店での対面の接客では、皆さん自然に使っていらっしゃると思うのですが、チャットなどの書く接客になると、省いてしまいがちです。これはチャットの特性でもあるのですが、文字を打ってから表示されるまでのタイムラグが短いので、より短い文章をやりとりする方が、対面の会話に近いテンポになるため、だんだん一つの吹き出しの中の文章は短くなっていく傾向にあるからです。ですが、いくらチャットとはいえ、お客様とのやりとりですから、友人とのチャットと同じようにとはいきませんよね。ある程度、きちんとした言葉遣いも求められますし、商品についての説明などは長文になりがちです。そんなときに会話にテンポを生み出すのが、「受容のことば」なのです。文字でのやりとりではありますが、「会話」でもあります。会話はコミュニケーションです。だからこそ、自分の言ったことが相手に受けとめてもらえたという感覚が、とても重要になってきます。「受容する」ことで、相手の投げたボールをきちんと受け取るわけです。その上で、こちらからの質問やご提案を投げかけるからこそ、文章の中で言葉のキャッチボールが正しく行われ、結果として会話のテンポ(リズム)が生まれるのです。限られた「文字」という接客の方法ではありますが、重要なことは対面と同じです。それをどのようにして表現していくのかということが、書く接客から購入につなげるヒントになるのではないかと思います。ぜひ活用してみてください! 文:馬場真由(影響力コンサルタント)クライアント(企業・個人)のターゲットに対しての「影響力UP」により売上向上、組織力向上に寄与する傍ら、様々な業務経験から、組織をリブレイクさせるために、専門家を組織し、クライアントの問題を解決する外部プロデューサーとしての業務も行う影響力コンサルタント。また、「言葉のチカラ」を使った影響力UPのための文章基礎力UP講座や言葉で人を動かすスキルであるLABプロファイル(R)に関する講座を開講している。 【主な資格】 カナダSuccess Strategies社認定 LABプロファイル®マスターコンサルタント 全米NLP協会 NLPプラクティショナー 日本NLP協会 NLPプラクティショナー