コロナ禍になり、オンライン販売が以前にも増して活発になってきた昨今、店頭では、接客を通して店舗にて購入する事の良さを実感してもらい、お客様をどう繋ぎ止めてリピーターにして行くのかが、課題となるでしょう。オンラインでの販売は、お客様が必要だから買う、ないから買うという論理的必要性に応じているのに対し、店舗での販売は、論理的必要性だけでなく、その商品を特に必要性はないけれど、なんとなく欲しいという感情になり、購入に至る。というように、接客によって購買意欲を掻き立てる事が可能です。これから3回に分けて店舗での接客販売にてすぐに実践できる『販売心理学』からのヒントをご紹介します。第1回目のテーマは「ファンを増やす心理学」についてです。まず、一番初めにお伝えしたいことは、人は、誰しも嫌いな人から物を買おうとはしないということです。ですから、販売員はお客様に好かれる事が一番大事なのです。メラビアンの法則:相手を受け入れるまでの4つの壁心理学では、『メラビアンの法則』というものがあります。研修などでお聞きになったことも有るかと思いますが、この法則では、人は相手を受け入れるまでに外見、態度、話し方、話の内容という4つの壁があるとされています。そのため、お客様に好かれる為にはこの4つの壁を上手に突破し、お客様との信頼関係を築くことがとても重要だ、ということです。お客様に好かれるためには、まず始めに、外見・態度はお店の看板と同等で、常にお客様の目にさらされているということを認識することです。このメラビアンの法則による4つの壁の判断の割合として、最も重視される55%を占める視覚情報は、外見・態度の2つの壁に関連して、第一印象に大きく影響を与えます。第一印象には初頭効果と呼ばれ、一度作られた印象はなかなか変わりません。お客様は店舗に入って販売員を見た瞬間、何らかの第一印象を持ち、相手を判断します。「人は外見で判断してはならない」とよく言われますが、これは逆に言えば、大抵の人は外見で判断しているということです。ちなみにここで言う外見とは、服装、髪型などの身だしなみや表情、立ち居振る舞い等のことです。販売する商品、ブランドがターゲットとしているお客様の年齢層、客層等から考慮し、それに相応しい身だしなみと立ち居振る舞いを意識する事が大切です。そして、次に大きな壁となっている38%の聴覚情報に当てはまるのは、話し方です。話し方について効果的なのは、ペーシングという手法です。声の高さ、大きさ、スピード等をお客様に合わせて話す。それに加えて、お客様の身振り、仕草等も、それとなく真似てみるミラーリングを使うと、お客様は販売員に対し、今出会ったばかりの人でなく、昔から知っている知人のように感じ、親近感を感じてもらえるでしょう。例えば、語尾が上がり気味のお客様には、自分も語尾を上げる話し方をする、背筋がピンと伸びてるお客様には、背筋をピンと伸ばして接客するといった具合です。どれだけ目の前のお客様に合わせられるかが大事です。最後、7%の聴覚情報に関連するのは、話の内容です。これは、商品の説明や提案を懸命にするいわゆる販売トークをするよりも、お客様の立場になり、求めていらっしゃる事を把握した上で、購入することによるメリットを明確に伝える事が大事です。しかしながら、メリットばかりを強調していたのではお客様はその事に対し、懐疑的になる可能性もあります。メリットを多く、デメリットを1つ伝えると、お客様からの信憑性が高まります。また、お客様とのコミュニケーションにおいて意外によくありがちなのが、「しかし」「でも」等の否定語を使ってしまうことです。これでは、話しを聞いた後味が悪い状態になってしまいます。例えば、店舗で売っている10万円のスーツをお客様に「これ高いね」と言われた事に対し、販売員が「でも、自宅で洗う事ができて、クリーニング代がかかりません」と答えたとします。そうすると「でも」という否定語を聞いたお客様は、「自分自身が受け入れてもらえなかった」「否定された」という感覚を持ってしまいます。ですからこれを回避するために、「はい、他のスーツに比べますと確かに高い商品でございます。実は、自宅で洗う事ができますので、クリーニング代がかかりません」と言うように、一度「はい」とお客様の言った事を受け入れて、そして否定語を使わない代わりに「実は…」という言葉を使って、お客様への印象を悪くせずに伝える事ができます。これをイエスアンド話法と言います。 今回はメラビアンの法則から、お客様がどんな状態で接客を受けているのかを考え、それに対してのおすすめの心理学テクニックをお伝えしました。練習は必要ですが、すぐに試していただける手法なので、是非今日から実践してみて下さい!きっと効果が実感していただけると思います。 文:村木まみ氏(LABプロファイル(R)コンサルタント/販売心理学コンサルタント)Success Strategies(カナダ)認定 LAB Profile® コンサルタント&トレーナー日本NLP協会認定 NLPプロフェッショナルセールス トレーナー NLPコーチング協会認定 マネークリニック トレーナー幼少の時期から洋画のアクション、コメディー映画が大好きで、90年代後半に渡米。大学では経済を勉強したいと考えていたが、既にアメリカでは沢山の実験や統計に基づき、幅広い分野の心理学が存在し、心理学先進国だということを知り、ソーシャルサイエンス学部で様々な分野の心理学を学ぶ。卒業後日本へ帰国し、もともと株取引に興味があった事から金融機関へ就職する。日本で大手外資系金融機関BNPパリバ証券会社、ドイツ証券会社を経て、オーストラリアのドイツ銀行シドニー支店で勤務し、デリバティブ取引に従事した。金融機関在職中にもビジネス、人間関係において心理学の大切さを痛感し、退職後は心理学を1から学び直す。ビジネス、プライベートの両面において効果的な言葉と行動の関係性を分析し、相手に合わせた会話や文章を構築するLABプロファイル®という手法と商品やサービスをお客様に提供する為に経営者・起業家にも必要な販売心理学を主とし、コンサルタント&トレーナーとして活動中。