第七回目は、コロナ禍の店頭接客についてのお話しです。 この3年の中で、接客の在り方は変わってきた。ホテルのチェックイン/アウトは、フロントやレセプションで「ようこそ」とキーを渡されるのではなく、機械から受け取り機械に戻す。アメニティは、必要なものを自分で取って部屋に持ち込む。某有名カジュアルブランドでは、購入する商品の入ったカゴを置くだけで会計ができる。コンビニやスーパーは、自分でパネルをタッチして精算する、ロボットが食後のお皿を運ぶレストラン等々、随分と変化した。人間のたくましさはステキでもある。店頭における販売は変化しているのか。消毒をしての入退店。距離をあけてのマスク越しの会話、金銭やカードは手渡しからカルトンを通しての授受、に替わったくらいだろうか。このコロナ禍でも、定期的にミステリーショッパーを実施しているブランドが多い。調査員のレポートや分析を読むと、相対的にセリングスキルが高くなっている傾向に気づく。このような状況下、店頭に足を運んでくださるお客様に感謝を感じ、少しでも楽しんでお帰りいただこうという気持ちが高くなっているので、お客様へ丁寧に要望を聴き、魅力的に自信をもって自社商品について語っている。また、最後は再来店を促し、ファン/リピーターへの囲い込みに必死になっている姿も見える。あるジュエリーブランドにネックレスの修理を2点持ち込んだ。留め具と細いチェーンが切れた部分の修理に15,000円ほど掛かるブランド。1点は、N.Y.五番街で「お客様、素晴らしいセレクトですね。」と外国人店員に言われ、とても嬉しい気持ちで購入した思い出深い商品であったが、修理の伝票を作成する作業の中で「随分と昔の商品ですね。何年前に買われましたか」と聞かれた。もう1点に関しても「こちらも、もう販売していない商品ですね。」とアイコンタクトもなく、メジャーで長さを測りながら必要事項を記入しながら言われた。「えっ?」という対応。思い入れがある気に入った商品なので使用頻度も高く、不具合が生じている私の気持ちを察してはくれない。ともすると「今では、たくさん新製品が出ています。新しい製品はお持ちではないのですか?」と言われた気もしたので、その時身に着けていたネックレスを取り「こちらのチェーンも汗でくすんでしまったので、磨いていただけますか。」と私から伝えてみた。「はい、かしこまりました。」とすぐにトレイを取り出し、私の前に置いた。再び「えっ?」。伝票を渡された後、「出来上がりのご連絡は、ラインでお伝えしたいので、私とライン交換をしていただけますか?」と言われた。「う~ん、このスタッフとはラインでつながりたくないなぁ。」と思いつつ、そうは言えずスマホを出し登録をすませた。すぐに「〇〇〇〇様 先ほどはお忙しい中ご来店くださいまして、ありがとうございました。お預かりしたネックレス2点の修理が完了次第、ご連絡させていただきます。出来上がりまでお時間をいただきますがご了承くださいませ。宜しくお願いいたします。〇〇百貨店(ブティック名) △△」 。これはもしかしたら、人間の様相をした精巧なロボット?と思った。このような義務的な修理の受け渡しであれば、進化したAIロボットで十分ではないだろうか。すでに200年弱の歴史を持つ伝統ある高級ブランド。このようなブランドは、修理して長く使えることが価値のひとつで、ブランドの神髄である。何だかとても寂しく感じた久々の店頭での対応であった。3週間後、出来上がりのラインがきたが、あえて返信をせず店舗に赴いた。本当に美しくピカピカに磨かれたネックレスが戻ってきた。また大切に使おうと思う。-----※投稿いただいた内容をプライバシー、読みやすさの観点から一部編集させていただいております。※コラム中の写真は、イメージ写真です。