第六回目は、想像もしていなかった嬉しい、驚きの接客をしてくれた販売員さんのお話です。 今から9年前、長男の小学校の卒業式の衣装を探しに出かけた時のことです。かなり値が張るのに、卒業式以外ほとんど着る機会がないであろう、大人用を小さくしたような全くオシャレでないスーツを着せるのがどうしても嫌で、白いシャツに細めの黒いネクタイ、スウェット地のタイトな黒いジャケット、それに少し色褪せた細身のジーンスと白スニーカーを合わせる、そんな服装をイメージしていました。ジャケット以外は既に家にあったので、そのジャケットを探しにあちこちのショップを回りました。どのショップでも、やはり卒業式用の“ザ・スーツ”というようなものばかり・・・。長男は身長が高い方だとは言え、やはりメンズでは大き過ぎるし、何よりスウェット地のカジュアルな黒いジャッケットが全く見当たらないのです。10店舗以上回り、半ば諦めかけて入ったショップで、かなり細身でスラッとした店員さんが、まさに私がイメージしていたジャケットそのものを着用しているではないですか!早速「店員さんが着てらっしゃるそのジャケットってありますか?」と尋ねると「僕が着ているのは少し前のシーズンのものなのですが、同じシリーズでよく似たデザインのものがあります。」と、その方へ案内してくれました。歩きながら、長男が卒業式に着るスウェット地の黒いジャケットを探し回っているが全然見つからず、諦めかけていたところに店員さんのジャケットを見て興奮したことを話しました。商品を見せてもらい「うん!イメージ通りのジャケット‼‼」と喜びましたが、店員さんが「以前はXSも作っていたのですが、今はSサイズまでしかなくて・・・もしかするとお子様には大きいかもしれないですね~」とSサイズを羽織らせてくれると、やはり肩幅が合っておらずかなり不格好・・・。やっと理想通りのものを見つけたと喜んでいたのに、これにはかなり落胆しました。それを見兼ねた店員さんが「一度、僕のジャケットを羽織って見ます?」と言って、自身が着ていたジャケットを脱ぎ、長男に羽織らせてくれました。するとサイズもジャストフィット!!私が思い描いていたまさにその通りのスタイル‼でも、この商品はもうどこにも置いていないのです・・・。何とも言えない気持ちでいると店員さんから「僕の着古しですけど、もしよかったら差し上げます。」と信じられない一言が!言っている意味が理解できず「え??」と聞き返すと「クリーニングに出して、今日着ただけなので、そんなに汚れてはいないと思いますが、それでも良ければ、どうぞ卒業式に着て下さい。」と。そうなのです。彼は自分の服を、初対面の息子に下さると言うのです。信じられますか‼‼現行モデルが4万円弱なので、恐らく同じような価格のものだろうと思い、お代金をお支払いすると言っても頑なに固辞され、逆に「このジャケットをそこまで気に入って下さったのも嬉しいですし、そんな晴れの場にこのジャケットを着ていただけるなんて、とても光栄です。」と言うではないですか。そして丁寧にラッピングまでして持たせてくれました。 卒業式当日、長男は格好よくきまっていた!笑 中学生になった長男は、友達と出かける時にはいつもその、彼から贈られたジャケットを着用し、大いに愛用していました。そして長男の卒業式から6年後。そのジャケットを着て、次男も卒業式に出席しました。次男もまた、格好よく決まっていた!笑 卒業式シーズンになると思い出す、ステキな、そしてちょっと信じがたいエピソードです。-----※投稿いただいた内容をプライバシー、読みやすさの観点から一部編集させていただいております。※コラム中の写真は、イメージ写真です。