第四回目は、高級レストランにて、常連さんと退職したスタッフをめぐるお話です。 雰囲気がとてもよい、でも私としては少しだけ敷居の高い、行きつけのレストランがありました。ホールを担当していたスタッフAさんは、私が行くといつも笑顔で快く対応してくれ、たまに話しかけてもくれました。私が独りでいるときは、今のタイミングで話しかけても邪魔にならないか、今は独りの時間が欲しいのでは…とこちらを陰で伺いながらも、必要とした時にはきちんと目が合うというタイミングが絶妙で、そこに居心地の良さを感じていました。 頻繁に通うようになって、何らかのアクションがなくても気付いてくれるAさんの対応に、自分もこのレストランの常連になっていると感じていました。Aさんは、私の嗜好やいつもオーダーするものをよく把握していて、私が好みそうな料理がメニューに出るとそれをおススメしてくれたり、その料理に合うワインを、私が気負いなくオーダーできる価格帯でチョイスしてくれたりもしました。 毎度毎度は金額の高いものをオーダーすることができないので、少し引け目を感じながら通っていましたが、それを打ち消してくれるかのようなリラックスできる対応がとても心地よく、会社の同僚や友人などを連れて行くようになりました。そのうちに、この素敵なお店がずっと長く続いて欲しい、という気持ちが芽生え出しました。お店の雰囲気にも、経営的にもプラスになって喜ばれるかな…と、華やかな女性友達との食事会の場としても度々使うようになりました。コロナでご無沙汰してしまい、緊急事態宣言が明けて久し振りにそのレストランを訪れると、Aさんは退職していました。とても残念でしたが、このご時世、仕方がないとも思いました。レストランの味は好みでしたし、会社の近くで便利という立地に今後も利用したいと思い、それからも数回お店を訪れました。しかし、Aさんがいなくなったお店は何故か居心地が悪いのです。昔からの顔見知りのスタッフは数名いますが、Aのお客様だったから…自分の担当ではなかったから…という遠慮なのでしょうか、一向に目は合わないし、話しかけられることもありません。Aさんがいた頃から私の事は見ていたでしょうし、もしかしてAさんはあまりよろしくない辞め方であったのか…などと心配の気持ちがよぎりました。 しかし、お客様をそんな気持ちにさせるのは接客業としていかがなものでしょうか。例えそのような、来店したお客様の元の担当がお店としては問題のあるスタッフだったとしても、それを感じさせない空気感、雰囲気作りは勿論、理想はどのスタッフにもリピーターの情報が共有され、お店のお客様としていつも通り喜んで食べて帰って頂けるような、プロとしてブレの無い対応能力が必要なのではないのかと、強く思いました。 -----※投稿いただいた内容をプライバシー、読みやすさの観点から一部編集させていただいております。※コラム中の写真は、イメージ写真です。※文中に出てくる登場人物は、仮名を使用しています。