CheerUp特別企画 『みんなが働きやすいお店づくり』 第1弾 「働く女性と生理」について考えよう!伊藤華英さんインタビューCheerUpを運営するJASPA(一般社団法人日本プロフェッショナル販売員協会)では、販売員の地位とスキル向上に関するサポートを多面的に行っています。働きやすい店舗にするためには、制度の充実ももちろんですが、お互いのことを理解し、フォローしあうことが重要です。 今回は販売員の働きがい、働きやすさに関する問題のひとつとして、働く女性と生理」について取り上げ、生理についての発信も積極的に行っている水泳競技の元オリンピアンの伊藤華英さんにお話を伺いました。【伊藤華英さん】べビースイミングから、水泳を始め、15歳で日本選手権に初出場。女子背泳ぎ選手として注目される。2008年日本選手権女子100m背泳ぎで日本記録を樹立。初めてオリンピック代表選手となる。その後、怪我により、背泳ぎから自由形に転向。自由形の日本代表選手として、世界選手権・アジア大会で数々のメダルを獲得。2012年ロンドンオリンピック自由形の代表選手となる。2012年10月の岐阜国体を最後に現役引退。現役引退後は、ピラティスの資格取得と共に水泳とピラティスの素晴らしさを多くの人に伝えたいと活動中。順天堂大学大学院で博士号を取得し、とアスリートとしての経験の両面から、働く人の心と身体の健康を守るメンタルタフネスやモチベーションマネジメントのテーマで講演し、好評を博している。最近では【スポーツを止めるな】代表理事 1252プロジェクトリーダーとしてスポーツ×生理について学生アスリート・指導者の方に向けての講義なども行っている。生理をオープンに話すことへのギャップ――伊藤さんは、生理について積極的に発信されていますが、そのきっかけはどのようなことだったのでしょうか。きっかけは、『Number』という雑誌のコラムで、アスリート時代の自分の生理のことについて書いたことでしたが、意外にみなさん興味を持ってくださって。自分のことなら間違いはないと思って書いたのですが、多くの反響をいただいたことで、これは社会の課題ではと徐々に感じ始めました。発信をはじめたのは、そこからですね。生理は女性の健康にはなくてはならないものなので、発信するからには、私もきちんと勉強して責任を持って話していかなくてはいけないなと思っています。―――コラムの反響が大きかったということですが、女性、男性、どちらからの反響が大きかったなど反響の差はありましたか?コラムがネットニュースにも取り上げていただいたので、男女問わず、数多くの方から反響をいただきました。生理のことについてというよりは、コラムが取り上げられていることについての反響だったかもしれませんが(笑)。今までそういうことを話す人が少なかったので、男女含めて反響が大きかったのかなとは思います。それまでは私自身も生理が当たり前すぎて、生理について話したり、考えたりすることが大事だということがわかっていませんでしたし、逆に男性は生理について知らなすぎたのかな。そのお互いのギャップが新鮮で、反響につながったのかもしれません。でも、それをきっかけに生理について悩んでいるというお話をいただくようになったりしたので、改めてこれは大事なことなんだなということに気づきました。だからこそ、きちんと発信することで、一人ひとり生理の違いを理解してもらえるのかもしれないと思いました。―――生理についての男女のギャップは、まだ埋まっていませんよね。まだまだギャップはあると思います。奥様やお嬢様がご家族にいらっしゃる場合は、比較的お話ししやすいと思いますが、そうでない方は生理の話題に触れることもそう多くないですよね。特に若い男性その話題に入ることは、なかなかないでしょうし、逆に女性の多い職場でもそういう話題には入ったことがないという方もいらっしゃると思います。ですが、どちらの状況だとしても、生理のことがわからないということは、悪いことではないということに気づいていただきたいです。生理が何かを知らないと話題に入ったらいけないという雰囲気がどうしてもあるので、男性の場合は特に踏み込みづらい話題ですよね。―――まずは「生理についてはわからない」ということをオープンにしていくことも、大事なのかもしれませんね。そうですね。やはり男性にも知っておいてもらうことが重要だと思うのは、日本では物事を決める場において、まだまだ男性の人数の方が多いという現状があるからです。例えば会社の役員会議や国会などですが、そうした状況では、女性だけが変革を訴えても変えることはできません。ですから、会社や国の方向性を決めるような場では、生理のことに限らず、男性が女性のことを知っていることは大事だと思います。男性が女性のことを理解してもらえるような努力はしていきたいと思っています。―――毎月おなかが痛いということがどういうことなのかというのを想像することは、本を読んでも難しいと思いますが、男性にも生理の悩みはたくさんあって、こんなにいろんな悩みがあるんだということを知ってもらうことは、実は大事なことですね。痛みに関しては、男性同士でもわかり合うことは、難しいと思います。例えば骨折の痛みや熱が出たときの辛さが、その人にとってどのくらい痛いのかは、他人にはわかりませんよね。生理だからといって、女性同士だって、本当の意味でわからないわけです。だからこそ、相手に寄り添うことが大事なのかなと思います。あなたの痛みは私にはわからないから、自分でどうにかしてということになるとそこで会話もストップしてしまうし、心の距離も広がってしまう。そうならないためにも、ひと言寄り添う気持ちを伝えてみる。単に「体調、大丈夫?」とか。 痛みは人それぞれなので、わかろうとするのではなく、「寄り添う」ことが大事だと話す伊藤華英さんわかろうとするのではなく、「寄り添う」―――寄り添う気持ちは大事ですよね。多いのは、「休憩する?」とか「どうにもならないよね」などと言ってしまうことですが・・・。そうした言い方は、言われた方のモチベーションが下がりますよね。解決してあげようと思うから、「どうする?」と言ってしまうのかもしれませんが、単に気持ちを表現するだけでいいと思うんです。言い過ぎはよくないですが、ちょっとした一言が、その会社で働くコミットメントを生むと思いますし、それには言葉の力が必要だなと思います。 ―――難しい問題を解決してあげようと思うから、どうしたいの?と聞いてしまっている可能性もありますよね。でも本当は、寄り添うということがどういうことかよくわからなくても、一緒に考えよう、支え合おう、大変な時はカバーするよと伝えることが重要なのですよね。 それは社会として必要だと思います。それは素敵なことですよね。育休なども同じだと思うんです。休んだら人が足りないではなく、休んだらカバーすることが普通になっていく。そうした相互関係があるといいなと思います。同時に、体制や仕組みを変える努力は必要なのではと思います。「知る」ことが第一歩。知るからこそ、自分で方法を選ぶことができる――――そうですよね。女性でも、月に1回の生理は、体のコンディションを整えるために必要だということは、頭ではわかっていると思うのですが、一人ひとり違うからこそ、生理があるということがどう体や仕事に影響があるのかが、わかりにくい部分もあるのではと思います。そうですね。生理はそもそも、妊娠。出産に向けても大事なものですよね。子宮の内膜が厚くなって、受精卵が着床しなければ内膜が剥がれ落ちるというサイクルが、月(25日から38日)に1回あるわけです。それはホルモンの働きと関係があって、それによって体調も気持ちも変化があるわけですが、その女性ホルモンによって女性の健康が保たれています。だから、生理が辛くて仕事に行けないというくらいであれば、病院に行った方がいいです。我慢してお店に立つということは、無意味です。辛い状態を我慢して何かをするということは、一生を崩してしまいますから。私たちアスリートの場合は、いろいろな選択肢があって、その中から自分が何を信じて何を選ぶかで結果が変わってくるんですよね。例えばトレーニングなどもそうですけれど、何をしたから結果が変わるというよりも、自分が選択したものを正しいと信じることができる人が、やはり最後は強い。私の場合は、北京五輪の時にちょうど生理期間に当たってしまっていたんですよね。その状況をどうするかと考えたときに、私は生理はつらいもの、面倒くさいものだとずっと思っていたもので、自分の体調を把握しないで、中用量ピルを使って生理期間をずらそうと決めました。中用量ピルというのは、ホルモン量の多いピルなのですが、そのピルを飲んで体重が5キロ増えました。競技で0.01秒を縮めようとしているときに、5キロ体重が増えるというのがどういうことか、おわかりいただけるのではないかと思います。他には、ニキビができてしまったり、女性ならお判りいただけるかなと思いますが、お腹がふくらんだような感覚があったり・・・。そういう状態が続いたときに、自分の選んだことに疑問を持ってしまいました。そうなると結果がわかってきてしまうんですよ。ですから、やはり自分がどういう状態なのか、自分の月経はどういった症状なのか、そして自分の痛み(自身の症状)はどういう状態にしておけばいいのかということを知っているかどうかが、重要です。それを知らないと、対策も疑問に感じてしまうと思うんです。正しい知識を知っておくことは、最高のパフォーマンスを出すための選択をするために必要なことだと思います。ただ単に生理に対してピルを飲んでおけばいいということではなく、自分はこういう状態だからピルは飲まないとか、プロゲスチン製剤を飲むとか、いろんな選択肢を持っておくことが大事なことだと思います。―――選択できるようにするために、自分の状態や生理について知っておく、ということですね。はい、いろんなやり方があると思うので、それを自信をもって選択するというのが大事だということです。ですから、我慢をするという選択肢もあるわけです。でも、やはりつらいな、しんどいなと思いながらやると結果にはむずびつかないと思うんです。専門家に意見を聞いて、対処法を考えたりする方がいいと思います。生理はひとそれぞれなので、つらい日もつらさもその人によって違います。よく「2日目だから、生理辛いよね」って声をかけてしまう人もいますけど、それは本当にひとそれぞれなんです。だから、それを知ってもらうという意味でも、男性にも知識だけは持っておいた方がいいと思います。*中用量ピル:月経困難症の治療目的で使われる製剤で、「月経随伴症状の治療薬」として効果が高く、また月経周期調節も同時に行うことができるもので、低用量ピルよりもホルモン量が多く含まれているもの。月経周期調節に利用される。*プロゲスチン製剤:プロゲスチン製剤にはプロゲスチンのみが含まれており、プロゲスチン製剤も,低用量ピルと同様に卵巣機能と子宮内膜の増殖を抑制することで月経困難症に効果を発揮する。文 :馬場真由写真:清水洋延〉〉後編につづく