LV Styling Project Director石川 MORITZ 馨さんプロフィール2000年にパリ政治学院を卒業後、パリのギャラリー・ラファイエットに出店しているルイ・ヴィトン・ストアのセールス マネージャーに就任。その後、ルイ・ヴィトン・マレティエを経て2005年に日本に戻り、ルイ・ヴィトン 六本木ヒルズ店のレザーグッズ カテゴリー マネージャー、ルイ・ヴィトン立川髙島屋店 店長、ルイ・ヴィトン松屋銀座店 フラッグシップ ストアディレクターを歴任。2010年以降はフランスに戻って、全世界のルイ・ヴィトン460店舗のユニフォーム、毎月のポップアップアニメーションや、ファッションショーのセノグラフィーのユニフォームのデザインと生産などを担うスタイリング プロジェクト ディレクターとして活躍中。日本に来て驚いたこと。それは販売スタッフの優秀さと…… 私が2007年から、松屋銀座店のフラッグシップ ストアディレクターをやっている時は「宇宙人店長」だって言われてましたね(笑)。だって、フランスと日本では考え方が全然違いましたもの。私は日本で働いたことがなかったので、余計に驚きましたね。 日本で驚いたことは3つあって、1つ目は販売スタッフ(大半は女性)が全員優秀なこと。2つ目は女性スタッフがキャリアを諦めていること。3つ目がみんな疲れていることでした。 フランスと違って日本は、大学を出た人たちが販売スタッフからスタートしますからね。学識もあるし、優秀なんです。だから私は、彼女たちにマネジメントの仕事である、年間および月間の目標設定や、それをどうやって達成していくかというアイデアを考える所から参加してもらっていました。その方がモチベーションも上がりますよね。 本部から送られてきた「Higher Together」というスローガンも「Happy Together」に変えちゃって、スタッフみんなで盛り上がっていたんです。お店が、チーム全員にとっての「舞台」になったみたいで活気がありました。当時は日本市場も飽和状態だったのですが、お客様も私たちの活気につられて来店いただいていたように思います。おかげで、松屋銀座店の時にはグローバルでもトップになる、記録的な売り上げを達成することができました。有給休暇のルールを変えたら、病欠もなくなりました だけど、そんな優秀な販売スタッフたちがみんな、同じ相談をしに来るんです。「こうしてキャリアを積んで行っても、結婚して子どもを産んだら辞めなきゃいけない」って。 実は私、松屋銀座店に勤務している時に妊娠していたんです。そしたらほかの店長さんたちから「いつ辞めるんですか?」って、多分親切心で聞かれたことがあって、「え?」って(笑)。私は辞めるつもりはありませんでしたから。子どもが生まれた後は、保育園とベビーシッターさんをお願いして、仕事を続けていました。 販売スタッフの人たちも同じように、堂々と仕事と育児を両立して行けるようにと、お店での働き方を考えていましたね。産休・育休を取るのは当たり前で、復帰もしやすいようにしていました。みんなが定時に帰りやすいように、私も一切残業しないようにしていました。上司がいたら、帰りにくいですものね。ダラダラと残業したって、仕事の効率は上がらないんですから。 当時から、日本では「ワークライフバランス」っていう言葉を耳にしていましたけど、フランスでは誰も言わないんですよ、そんなこと。みんな勝手に自分の時間を謳歌しているから。販売スタッフだって、自分のシフトが終わったら、接客中でも「私は交代の時間なので、あちらのスタッフに代わりますね」なんて調子ですよ(笑)。 みんな、自分の時間を有意義に使ってハッピーになることが大事なんです。 そしてさきほど、「みんな疲れていた」と言いましたが、病欠が多かったんです。日本って、一般的に「病気でもないと有休を消化しにくい」っていう空気がありませんでした?だからなのか、どうなのか、私たちのお店でも病欠が多かった。 でも、「有休を1か月とれるようにします。病欠がなかった人は、2週間+2週間の有休がとれます。病欠が1日あった人は、2週間+13日の有休になります」って言ったら、みんな病欠しなくなったんです。 (つづく) ≫次回は後編「コロナ禍の今、改めて感じていること」 取材・文佐藤秀治(お客様を動かす「共感づくり」の専門家)日本IBM、電通ワンダーマンを経て、現在、(株)プラップル代表取締役。コピーライターとして、企業のブランド育成やお客様事例制作に携わってきた経験から、お客様を動かす「共感づくり」をサポートし、事業や個人の成績向上を達成につなげるコンサルティングを行う。