LV Styling Project Director石川 MORITZ 馨さんプロフィール2000年にパリ政治学院を卒業後、パリのギャラリー・ラファイエットに出店しているルイ・ヴィトン・ストアのセールス マネージャーに就任。その後、ルイ・ヴィトン・マレティエを経て2005年に日本に戻り、ルイ・ヴィトン 六本木ヒルズ店のレザーグッズ カテゴリー マネージャー、ルイ・ヴィトン立川髙島屋店 店長、ルイ・ヴィトン松屋銀座店 フラッグシップ ストアディレクターを歴任。2010年以降はフランスに戻って、全世界のルイ・ヴィトン460店舗のユニフォーム、毎月のポップアップアニメーションや、ファッションショーのセノグラフィーのユニフォームのデザインと生産などを担うスタイリング プロジェクト ディレクターとして活躍中。鬱になるような挫折から、転がるようにパリへ 今の仕事に就くまでの経緯というのが、割といい加減で(苦笑)。私は元々バレエに打ち込んでいました。東京でRoyal Academy of Dancing の Student memberとして有名な先生に学んでいたのですが、19の時に関節を痛めてしまい、さらには才能の限界を感じて、挫折してしまったのです。当時は、もう何も考えられなくて、鬱になるぐらいでしたね。バレエに人生を賭けていましたから。 それから就職について考えなきゃいけなくなるのですが、崖っぷちですよ。それまで勉強なんてしてませんから。日本じゃ就職できないんじゃないかって(苦笑)。「じゃぁどうしよう! 留学しようか!」と一人で考えたんです。留学というと大体はアメリカに行きますよね。でも、うちの家族は英語が得意ですが、フランス語は出来ない。一方の私は、学習院をエスカレーターで大学まで上がっていましたが、ほかに籍を置くところがなかったのでフランス語を専攻していました。だから、親への反発も含めて「留学するなら、フランスにしよう!」と(笑)。そんなわがままな娘を支えてくれた両親には今はとても感謝しています。 そんなこんなで駐日フランス大使館に相談しにいったら、グランゼコール(高等専門教育機関)である「パリ政治学院」の外国人コースがあると聞いて、そこに通ったんです。けれど、外国人コースを1年受講しただけではフランス国内で働けないことが分かって本科を受験し直すんです。でもそれまで勉強してないんですから、そうそう上手くもいかず、結局卒業するまで5年かかりましたね(笑)。マネージャーらしくない「カオリ流」店舗運用 在学中の1999年にルイ・ヴィトンのモンテーニュ店でインターンをしている時に、「あ、店舗の販売スタッフって楽しいな」って思ったんです。そして2000年に卒業する時に「私、店舗のマネージャーをやりたいんです」と志願して、ルイ・ヴィトンに入社しました。当時、日本からの買い物客が増えていましたので、「日本人のマネージャーがいてもいいだろう」と採用してくれたのでしょうね。 でも、フランスの店舗っていいことばかりではないんですよ。販売スタッフで入社した人は、いつまで経っても、販売スタッフのまま。後から入って来た頭でっかちのお嬢ちゃんお坊ちゃんのマネージャーにああだこうだと指示されるわけですよ。そんなの、楽しくないですよね。 私のポジションは「副店長」で販売スタッフ15人のチームを受け持っていましたが、私は販売スタッフに近いスタンスで、「みんな一緒に売ろう! 一緒にがんばろう!」っていうノリでやってましたね。上司からは「君のやってることはマネージャーらしくない」なんて言われましたけど、そんなの関係ない(笑)。 「カオリと仕事するのは楽しい」と販売スタッフに言われた時は、私も楽しかったですね。お客様をハッピーにするには、スタッフ全員ハッピーでなければいけない、というのが私のポリシーですから。 (つづく) ≫次回は中編「日本のショップで働いてみて、驚いたこと」 取材・文佐藤秀治(お客様を動かす「共感づくり」の専門家)日本IBM、電通ワンダーマンを経て、現在、(株)プラップル代表取締役。コピーライターとして、企業のブランド育成やお客様事例制作に携わってきた経験から、お客様を動かす「共感づくり」をサポートし、事業や個人の成績向上を達成につなげるコンサルティングを行う。