販売員の「本音」インタビュー02吉村ひかるさん株式会社BEST GRADE 代表取締役AICI国際イメージコンサルタント協会認定 国際イメージコンサルタント一般社団法人パフォーマンス教育協会公認 エグゼクティブ・パフォーマンス・インストラクタープロフィール銀座三越、日本橋三越で19年間、販売員やバイヤーを経験。ご主人の単身赴任がきっかけとなり10年前に退職した後、「三越での、これまでの経験をすべて活かせる仕事!」として、日本で3人目に“国際イメージコンサルタント(Certified Image Professional)”の認定を取得。10万人以上を接客してきた経験をベースに「お客様の夢の実現」を強力にサポート。明るくてエネルギッシュで、笑うと目がなくなる“快活癒し系”。著書:『女は服装が9割』(毎日新聞出版 2018/3/22) 接客の現場でリードする秘訣は「ストックの整理」と「返品業務」にあり?私がとても大事にしていた付帯業務が、「ストックの整理」と「返品業務」でした。面倒だから嫌だっていう人も多いのですが、こうした仕事も、店頭での接客に活きてくるんです。まず、ストックの整理をしていると、「何が売れて、何が売れない」「どのサイズが売れるのか」「売れる品番の中でも何色が売れるのか」ということが、面白いほどよく分かるんですよ。それに、ストックの状況を把握していると、店頭でお客様から問い合わせいただいた際にも、在庫があるかどうか、お待たせすることなく、その場で答えられますからね。それに、商品を深く把握していくと、お客様への提案も変わってくるんですよね。例えば、普通なら「M」をお勧めするお客様でも、「この方だったら、Lを着た時の方が、抜け感が出て、素敵なシルエットになるなぁ」とか。「返品業務」も、面倒だし、嫌がる方は多いじゃないですか。でも、いろんなことを考えるチャンスなんですよね。入荷してきた時に、「これはちょっと売れないんじゃなぁい?」と思ったものが、予想通り返品になった時は、「やっぱりな」で済むんですけど、「あ、これ素敵。きっと売れる!」と思ったものが返品になると、「何がいけなかったのだろう。白だから汚れが目立つのを気にされたのかしら」とか、いろんな理由を考えるんですよ。それでお店に、バイヤーやデザイナーの方がいらっしゃった時に……本当は私が口を出すような役割ではなかったのですが……質問された時には「ここがもう少しこうだったら、売れ行きも違ったかもしれません」といった、自分の意見をお伝えできることもありましたね。仕事は全部つながっているんだということを感じました。ひとつも無駄はないんですよね。どんなことを成長の機会に変えていくかは、自分次第ですもの。仕事でも人生でも、楽しんだもの勝ちですよ。自分が買い物に行ったときも、楽しそうに仕事をしている販売員さんのほうが、接していて面白いですよね。「ああ、この仕事、嫌だなぁ」で終わりにするのではなくて、「あれ、この仕事、もしかしたら奥が深い? 自分のためにもなる? あれ、楽しいかも」というところまでいけば、絶対成長しますよ。 女性としての人生経験が、そのまま接客に活かせる面白さ今、少子高齢化で、どこでも人手不足だというお話がありますよね。それは、結婚・出産して一度は退職していた女性が、また復職する機会が増えたということでもあります。その点、ファッション販売員のお仕事は、女性が、その人生経験を十分に活かせる職業だと思いますよ。人は、年齢や立場が変わると、人との関り方も変わってきますよね。どんな人たちが集まる、どんな場所に着ていかれるお洋服なのか。どんな目的を持って探されているお洋服なのか。そういった背景まで考慮しながら、より良い提案を行っていくことが求められますので、やはり人生経験が豊かであるほうが、有利ですよね。たとえば「出産・育児」といったライフイベントの経験も、お客様の提案に活かせます。経験しないと気づかないことって、沢山ありますから。かといって、何もかも自分自身で経験することはできません。そこで重要になるのが、お客様とのコミュニケーションなんです。私が三越にいた時も、本当にいろんなお客様がいらっしゃいました。中には、一度もお洋服は買わないのに、毎日のようにお話をしに来られていたおばあちゃんもいましたね。「これ、下で売ってたの。美味しそうだから買ってきちゃった」と言って、差し入れしてくださったり。そういう方をはじめとして、年齢も立場もさまざまな方々と、毎日のようにお話させていただくわけですから、学ぶことばかりですよ。私自身も、10万人以上の接客を行う中で「人間力」が磨かれたように感じています。だから、今、販売員をされている方や、これから販売員をやってみようかな、と思われている方には、ぜひお客様とのコミュニケーションを大切にしていただきたいと思います。マニュアル通りの接客だったり、必要最低限のことしか伝えない接客では、インターネットで買い物するのと変わらなくなってしまいますからね。実はこの間も、イメージコンサルティングのお客様をお連れして買い物に出かけた時に、すごく「もったいないなぁ」と思う出来事があったんです。(つづく)取材・文・撮影佐藤秀治(お客様を動かす「共感づくり」の専門家)日本IBM、電通ワンダーマンを経て、現在、(株)プラップル代表取締役。コピーライターとして、企業のブランド育成やお客様事例制作に携わってきた経験から、お客様を動かす「共感づくり」をサポートし、事業や個人の成績向上を達成につなげるコンサルティングを行う。