はじめまして。コピーライターの川上徹也です。あなたは、売り場で何を売っていますか?「商品に決まってるでしょ?」という声が聞こえそうです。ではその商品は思ったように売れていますか?もし思ったように売れていないのであれば、あなたは「物を売るバカ」になっているかもしれません。「物を売るバカ」とは、物(商品)を売ろうとすればするほど売れない状態のことを言います。あなたは商品の特徴だけをアピールしようとしすぎていませんか? 商品の特徴だけを語るだけでは、ネットショッピングでこと足ります。あなたが目指すべきは、お客さんの「感情」を動かして「欲しい」という気持ちに導くことです。その時に有効なのが「ストーリー(物語)」を語ること。この場合の「ストーリー」は、複雑である必要はありません。短くわかりやすく、お客さんの感情を動かし、「欲しい」という気持ちにさせるエピソードのことです。お客さんが「欲しい」と思うポイントは人それぞれです。心が準備できてない段階で「ストーリー」を語られても、気持ちが乗っていきません。まずはあなたという人に興味を持ってもらう必要があります。その上で、商品にまつわる「ストーリー」を語ると、お客さんは「共感」を覚えます。人は話している相手に共感すると、コスパなどの理性的な判断を超越して、どうしてもその商品を欲しいと感じるようになるのです。ではどのような「ストーリーを語れば、お客さんは「欲しい」という気持ちになるでしょう? 重要なのは 「商品」ではなく「人」にまつわるエピソードを語ることです。小説・映画・ドラマなどの「ストーリー」に共通の要素はなんでしょう? それは「人」が主人公だということです。これは販売員のあなたが「ストーリー」を語る時も同じ。人は「商品」ではなく、「人の思いや感情」に共感するのです。主人公になるべき「人」は、さまざまです。たとえば洋服であれば、「ブランドの創設者」「デザイナー」「工場の製作スタッフ」「素材の生産者」「販売しているあなた自身」「以前買ってくれたお客さん」「目の前にいるお客さん自身」などが考えられます。お客さんの立場になって、誰を主人公にしたストーリーが共感を呼ぶかを考えてみましょう。最近「サステナブル」という言葉をよく耳にします。「持続可能な」という意味です。例えばファッション業界におけるサステナブルとは、原材料から生産・販売方法に至るまで、地球環境の維持に配慮された洋服のことをいいます。しかし、「サスティナブル」を訴求しただけでは人の心は動きません。誰(ストーリーの主人公)がどのような思いから「サスティナブルな取り組み」を始めようと思ったかが重要なです。あなたもぜひ、売り場で「人」を主人公にしたストーリーを語ってみてくださいね。 文:川上徹也 (コピーライター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。)大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られ、「企業」「団体」「地域」などが本来持っている価値を見える化し輝く方法を、個別のアドバイスや講演・執筆を通じて提供している。企業・団体の広告・広報アドバイザーをつとめることも多い。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)など多数。海外にも数多く翻訳されている。