株式会社三陽商会 婦人ポール・スチュアート トレーナー田中奈津子さんプロフィール2003年明治学院大学法学部を卒業後、㈱三陽商会入社。 婦人ポール・スチュアート新宿高島屋店にて販売員としてのスタートを切る。有楽町西武店でサブチーフを経験し、再び新宿高島屋店に店長として配属される。その後、西武池袋本店、横浜高島屋店、日本橋三越店で店長、エリアマネージャーを歴任し、2020年9月からは店長と兼務でトレーナーを務める。2021年3月からはポール・スチュアートのトレーナーとして活躍中。 参画意識とコミュニケーションがチーム運営の鍵チームをまとめるときは、店長というのは立場的に強くなりがちなので、気をつけていないと独断で引っ張っていくチームになってしまいますよね。ですから、私はスタッフの意見をよく聞くことと、コミュニケーションを良くとることに、特に気をつけています。 例えばお店にディスプレイしたものの反応が良かったというようなことから始まり、お客様に関することなど、小さくても日々の報連相、そして「なぜ売り上げが厳しいのか」ということに関する意見まで。何かに対する意見や考えをスタッフ全員から吸い上げられれば、よりいい対策が出てくると思っているので、自分だけが正しいという態度ではなく、皆の意見から指針を出すということを心掛けています。 なによりコミュニケーションをして意見を聞くことの最大の効果は、参画することでその人自身が責任を持ってくれることだと思います。意見を出したスタッフも、自分が言ったことだから頑張って売ると思いますし、参画意識というのは、本当に大事だと思います。特にポールスチュアートというブランドでは、自分よりも販売経験が長いスタッフも多いので、教えていただきたいというスタンスで接することも、影響が大きいと感じます。そうした両方の意味で、コミュニケーションをしたり、意見を聞いたりしながら、よりよい結果をチームで作っていけたらと思っています。 またお客様はいろんなタイプの方がいらっしゃるので、そのためには一人でも多くの人の意見を聞く方が、チームや組織は強くなると思います。誰か一人の意見が組織で強くなりすぎてしまうのは、リーダーシップがあっていい部分もあります。ですが、今のコロナの状況など昨日まで良しとされていたことが、急にできなくなってしまうこともあり、これからの新しい時代に向けての組織を考えるのであれば、やはり一理あると思う意見を取り入れることが重要になっていくのではないかと思います。こんな販売員を育てたいこれからの理想の販売員としては、自分がどうありたいかと繋がってくるのですが、「お客様に常に誠実であること」を積み重ね、信頼をされる販売員を目指してもらいたいと思っています。 接客というのは、お客様からの小さいご要望にきちんとお応えすることの積み重ねだと思うんです。例えば今の時期なら、会話の中で「寒くなったけれど、室内に入ると暑くなるから着るものに困る」と言われた場合、どっちの内容も拾わなくてはいけない。「寒くなったけど・・・」というのは、「暖かいものが欲しい」ということですよね。そして「室内に入ると・・・」というのは、「暑い」と言いつつも、ただ「暑い」ということを言いたいわけではない。そのどちらにも反応して差し上げる。この場合は「外ではしっかり防寒ができるコートが必要ですね。中に入ったら、調節できるように薄いブラウスとカーディガンなどにしておいて、暑くなっても調節できれば便利ですよね。重ねてコートと合わせて着れば、防寒も温度調節もできますし、便利ですよ」などとご提案するわけです。 他にも少しのことでもお客様が言ったことを覚えていて、アプローチする際にそれに対応することを必ずするようにしたり、ひとつでもおっしゃっていることを実現できるように叶えて差し上げることが、プロフェッショナルな販売員への一歩だと思っています。 インタビュー・文:馬場真由香(フリーライター)写真:清水洋延(JASPA事務局)