コロナ禍の今、この先の仕事や人生について不安に思うことも多いかも知れません。こんな時だからこそ一度立ち止まり、ご自身の「キャリア」について考えてみませんか。 「キャリア」という言葉を聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか。昇進や昇格、キャリアアップ、キャリアウーマン・・・。バリバリ働いて社会的地位を高めていく人をイメージして、自分には遠いことのように思うかもしれません。 実は「キャリア」という言葉の語源は「轍(わだち)」で、車輪の跡という意味です。あなたが歩んできた道そのものがキャリアなのです。車輪の跡、という意味から、これから先の道という意味に広がり、将来設計やスキルアップ計画なども含むようになりました。また、キャリアは仕事面のみでなく、人生経験や人生設計をも含む広い概念です。仕事は人生の一部ですから、切り離して考えることはできませんよね。 では、自分のキャリアを考えるとは、具体的にどうすれば良いのでしょうか。①過去②現在③未来④現在、この順番で、以下のように考えることがポイントです。 最初に「過去」について考えます。人生であなたが夢中になった経験を3つほど思い出してください。ひとつは仕事のことを選ぶとよいでしょう。その経験を映像でも見るように目の前に思い描きながら、何が自分をそんなに夢中にさせたのか、自分が本当に大切にしていることは何かを考えます。例えば、学生時代の部活の経験であれば、大事なものは「ケンカもしながら共にがんばった仲間」とか、「人知れず毎日努力すること」かも知れません。人と同じ経験でも大切だと感じることは人それぞれです。過去の経験にはあなた自身を知るヒントがたくさんあり、それが未来を考える時の手がかりになります。 次に「現在」です。今、あなたが持っているスキルや強みはなんでしょうか。学校で学んだことや資格に加え、経験から得た教訓やスキル、強みをたくさん書いてみましょう。経験からの教訓としては「接客の極意10箇条」とか「売上達成のコツ5ポイント」「家庭との両立のための工夫」など、自分なりの法則をまとめると振り返りにもなり、人にも語れるようになるのでオススメです。強みについては職場や親しい仲間からフィードバックをもらうと、自分でも気づかない強みを知ることができ、先に進もう、という自信にもなります。 現在までのキャリアを感じることができたら「未来」へ行きます。まず、この先、人生の節目や区切りとなりそうな時期を見つけてください。1年後、3年後、10年後でも構いません。次に、その区切りの時に「どんな自分でありたいか」をイメージします。何をしていたいか、という行動ではなく、「ありたい姿=状態」を想像することがポイントです。私は25歳の時に、35歳の自分を想像して「仕事で後輩から憧れられる先輩でありたい」「いつも人を明るくする存在でありたい」「ハイブランドの服を着こなせる自分でありたい」と思ってそれを目標にしていました。自分が大切にしていることや強みをヒントにしたり、家族や職場の同僚からどんな言葉をかけられたいかを考えたりするとイメージが広がります。イメージしてワクワクしてきたら、それがあなたのありたい姿です。 最後に「現在」に戻ります。今の状況は厳しいかも知れませんが、そんな中でもできる行動、ありたい姿に向かって1ミリ前進する行動を考えます。「明日、後輩に接客の極意10箇条を伝える」「いつもより挨拶を元気にする」など、ささいなことでいいのです。1ミリ行動を続けると少しずつ未来が変わり、数年後に今の自分を振り返った時には「あの時はがんばった」と思えるはずです。 キャリアを描くというのは難しいことではありません。まずは過去と現在と未来の自分を感じてください。生きている限り続くキャリアを大切に、1ミリ進んでください。未来はそんなあなたを待っています。 文: 杉江美樹(株式会社Work F-style代表取締役)酒類飲料メーカー、外資系保険会社勤務を経て、2014年に株式会社work F-styleを立ち上げる。一人ひとりの持つ力を最大限に発揮するためのキャリア支援やチームづくりのサポートを行っている。