相良貴子さんLVMHファッション・グループ・ジャパン株式会社 ジバンシィジャパン リテール トレーニング マネージャー プロフィール1999年に大手ファストファッションに販売員として入社。25歳で銀座店店長、新宿店店長を経て、日本で初めて店長兼トレーナーとなり、店長候補の育成、中国1号店店長の育成、中国1号店の出店のためのサポートに携わる。帰国後、日本のエリアマネージャーとなり、国内の出店と複数店舗の運営、人材育成の評価指標を人事と協働での作成などに関わる。 その後、出産を経て、マークジェイコブスジャパン株式会社へ転職。これまでの経験を活かしながらも、リテールトレーナーとして人材育成に特化し、約300名向けの研修でクラスルーム型のトレーニングなどを実施。 LVMHグループのグループ内異動の制度により、クチュールブランドであるジバンシィジャパンヘ異動し、新たにクリエイティブ・ディレクターに就任したマシュー・M・ウィリアムズの下でブランドイメージの変化に応じたリテールトレーニングを担当。クラスルーム型だけでなく、インストアトレーニングに注力し、現在に至る。マシュー・M・ウィリアムズ着任発表イベントでの「涙」 私は、2019年の秋にLVMHグループ内の人事異動で、ジバンシィジャパンのリテールトレーナーとして働いていますが、接客に対する想いは今も昔も変わっていません。私は昔から、「お客様が素敵になる瞬間」が大好きなんです。 接客に際して、「買ってもらうこと」を目標にしてしまうと、お客様への興味が薄くなってしまいますよね。けれど「お客様との関係構築」を目標にすると、コミュニケーションの質がまったく変わってきます。その方に似合うアイテム、喜んでいただける提案ができるようになります。 また、お客様にブランドの哲学やデザイナーの人柄などへの愛着を持っていただくためには、私たち自身が確かな理解と深い愛着を持ってプレゼンテーションする必要があると思っています。 そのことを改めて実感した出来事が去年ありました。 2020年6月に大切なお客様をお招きして、ジバンシィの新しいクリエイティブ・ディレクター、マシュー・M・ウィリアムズの着任発表イベントを行ったのですが、コロナ禍ということもあり、資料が不足していたのです。「どうしよう」と話し合う中で、私が拙いながらもマシューの人柄を伝えるための動画を作成しました。 この動画を使ってくれたスタッフが、自分で涙を流すほど気持ちの入ったプレゼンテーションをしてくれたことでお客様も引き込まれたのか、値段も素材も分からないのに、ご成約いただけたのです。 コロナ禍の今だからこそ、温かいコミュニケーションを ジバンシィに異動してから今日まで、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響で、大変な日々が続いています。セリングセレモニーのトレーニングもオンラインで実施したり、お客様もご来店しにくい状況が続いていますが、マイナスな側面ばかりを考えるのではなく、「今までは考えたこともなかった選択肢を選べるようになった」と、ポジティブに捉えることも重要だと思います。 それが「デジタルでのコミュニケーション」です。在宅勤務でお客様に直接お会いできない時でも、メールを使って温かいメッセージを送ることは出来ます。 私は正直、デジタルに関しては素人です。だからこそ、ほかのスタッフたちの方がうまく活用出来ると思います。 その証拠に、2020年4月の緊急事態宣言が明けて営業を再開した後、ほぼ全店からビデオメッセージやメールなどが、つながりのあるお客様に向けて送られました。 私も、在宅勤務の時間を使って、リテールハンドブックやトレーニングのチェックブックなど、いろんなプログラムを作成しました。アイコンバッグを売るためのトレーニングもZOOMで実施しました。コロナ禍の中で、いかに意識を変えてひとつひとつ販売していくか。そういうことを考えてきました。 今は苦しい状況が続いていますが、未来を想定した「種まき」の時期だと考えています。 マシューを中心に変化が始まっているジバンシィの魅力を、私たちスタッフの中で「共通言語化」してお客様に伝えていく。そうした積み重ねが大事だと思います。 私たち自身が「どうありたいのか?」を考えることで、「軸」がブレることなく進んで行けると思います。 (了)