相良貴子さんLVMHファッション・グループ・ジャパン株式会社 ジバンシィジャパン リテール トレーニング マネージャー プロフィール1999年に大手ファストファッションに販売員として入社。25歳で銀座店店長、新宿店店長を経て、日本で初めて店長兼トレーナーとなり、店長候補の育成、中国1号店店長の育成、中国1号店の出店のためのサポートに携わる。帰国後、日本のエリアマネージャーとなり、国内の出店と複数店舗の運営、人材育成の評価指標を人事と協働での作成などに関わる。 その後、出産を経て、マークジェイコブスジャパン株式会社へ転職。これまでの経験を活かしながらも、リテールトレーナーとして人材育成に特化し、約300名向けの研修でクラスルーム型のトレーニングなどを実施。 LVMHグループのグループ内異動の制度により、クチュールブランドであるジバンシィジャパンヘ異動し、新たにクリエイティブ・ディレクターに就任したマシュー・M・ウィリアムズの下でブランドイメージの変化に応じたリテールトレーニングを担当。クラスルーム型だけでなく、インストアトレーニングに注力し、現在に至る。日本も海外も「人材育成」のポイントは同じだった 私、実はファッションに憧れていたわけではなくて、就職活動の時に「永く続く企業で働きたい」と考えていたところ、当時日本に上陸したばかりの某大手ファストファッションのビジネスモデルが、とても気になったのです。それが、この業界に入ったきっかけでした。 新卒で入社後、25歳で銀座店の店長に選ばれて、約3年後には新宿店のオープニングを店長として任されるようになりました……って今振り返ると、出来すぎた話だと思われるかもしれませんが、当時は私を含めて若いスタッフばかりで、出店ラッシュも続いていたため、チャンスがいっぱいあった時代でもありました。運が良かったのだと思います。 この新宿店時代に、スペイン本社の人から「今、新宿店も好調だけど、日本法人が次のステップに進むために何が必要だと思う?」って聞かれた時に、私は「店長になる人材を育成できる人が欲しい」と答えたんです。当時は、店長候補として外部から採用した人が、すぐに退職してしまうということが続いていたんですよ。 そうしたら、スペインからトレーナーを1人派遣してくれまして……。思えば、これが私の人生にとって、大きな転機になりましたね。 それというのも、当時その会社では人材育成のマニュアルもなく、約50名ものスタッフがいる銀座店を任されていた時は本当に手探り状態で、私なりに「これでいいはず!」と頑張ってきたのですが、「本当にこれでいいのかな?」って。 スペインから来たトレーナーに教わったことは、だから私にとっても「答え合わせ」みたいな側面がありましたね。この時に「うん、私がやってきたことは間違ってなかった!」と実感したことが自信になり、その後、人材育成の評価指標作成などの業務を行うことにもつながっていきました。 一方通行な「教え」と、双方向な「気づき」の違い けれどもまだ、甘かったですね(笑)。 ファストファッションの会社に13年勤めた後、マーク ジェイコブスにリテールトレーナーとして転職した時に「自分はまだ何も知らなかったな」ということを思い知らされました。 ファストファッションの時はほとんどがOJT(On-the-Job Training)で一方的に仕事のやり方を教えていく方法をとっていたのですが、マーク ジェイコブスでは20名ごとのクラスルームに分けて、コーチングの要領でセリングセレモニーのトレーニングを行っていたため、トレーナーにはファシリテーションのスキルが求められていたのです。 当時の私には、そんなスキルは「ゼロ」でしたから、クラスを盛り上げながら、ひとりひとりのモチベーションとポテンシャルを引き出していくことに苦労しました。本国のトレーナーからのフィードバックを受けながら学びを重ねていきまして……6年頑張りました。この間、大変なこともありましたけど、とても大きな学びを得ることができました。 それに、転職を挟んだ数年間は、「仕事」だけではなく、「人生」についても考えさせられた時期でしたね。 (つづく)