JASPA インタビュー企画販売員のお仕事内田奈津美さん(umber_vintage 経営者)内田奈津美さんプロフィール学生時代に古着屋でアルバイトをしたことをきっかけに古着に魅了され着の魅力をお客様に伝えたいという思いで接客に励み、店長まで務める。その後、自身のお店「umber_vintage」をオープンさせ、販売員として接客もしながら、スタッフ育成、海外への買い付けなども行う。現在は店舗運営、買い付けだけでなく、ポップアップショップへの出店など新たな事業にも挑戦中。「売ろう」とするのではなく、お客様の気持ちを読み解くお洋服が好きな人なら、自分で服を着たりコーディネートしたりするのはもちろん好きだと思います。でも、「自分が着る楽しさ」と、それを「人におすすめめして売る」ということは、やっぱり少し違うことなんですよね。 古着屋で販売員として働いていたときも、「商品を売らなきゃいけない」というプレッシャーより、「どうやったらお客様に喜んでもらえるだろう」「またこのお店に来たいと思ってもらえるだろう」ということばかり考えていました。接客の時に自分の考えや感覚だけでお客様へ提案するのは、自分自身がお客さまの立場であれば嫌ですし、絶対に違うと思っていました。お客様が今何を求めているのか、どんなタイミングで声をかけてほしいのかをよく観察するようになりました。 古着の最大の特徴は、基本的にすべて「一点もの」だということです。新品のアパレルであれば、同じサイズや同じ色の在庫を何枚も用意して分かりやすく売ることができますが、古着にはそれができません。だからこそ、お客様との会話や空気感を大切にして、その人に本当に似合うもの、その人が心の底から「可愛い!」と思えるものを一緒に探していく必要があります。 私の「好き」が溢れ出る、自然なコミュニケーション仕入れに関しては、完全に自分の直感や「今これが可愛い、こういうものがあったらいいな」という自己中心的なこだわりを大切にしています。自分が心から愛せるもの、可愛いと思えるものだけを厳選して選んでいるので、お店に立っているときも、その洋服に対する「好き」という愛や熱量がどうしても言葉や表情からダダ漏れになってしまうんです。 ある時、他のお客様とウェディングドレスの話で盛り上がっていたら、その様子を近くで聞いていた別のお客様が「私、結婚式を控えているので、ぜひ内田さんに相談に乗ってほしいです!」と声をかけてくださったことがありました。自分が心から洋服やヴィンテージを愛していて、「これ本当に可愛いよね!」と思っている熱量は、特別に隠そうとしなくても自然と相手に伝わるものなんだなと感じました。 接客において一番大切なのは、自分の主観を一方的に押し付けることではないと思うんです。「私はこれが本当に可愛いと思っているけれど、あなたはどう感じますか?」という前提を共有しながら、お客様の好みや骨格、ライフスタイルに寄り添っていく。私が選んだお洋服の魅力を熱量を持って伝えつつ、お客様が求めているものや似合うものを汲み取る。そのキャッチボールがうまくいったときに、お互いの「好き」がピタッと重なり合って、最高の共感が生まれるんです。 人と人との繋がりが生む、予測不能な面白さと引き出しの数々接客業をしていると、本当に様々なバックグラウンドを持つお客様に出会います。ファッション業界の方だけでなく、美容師さんやスタイリストさん、さらには全く異なる業界で働いている方まで、本当に多種多様な人たちがお店に足を運んでくれます。自分自身はファッションの世界しか知らなくて、学歴があるわけでも難しい知識があるわけでもありません。だけど、接客を通じて様々なお客様と話をすることで、「世の中にはこんな仕事があるんだ」「こういう生き方をしている人がいるんだ」ということを生身の言葉で教えてもらえます。店頭でいろんなお客様と触れ合い、生きた経験談を聞かせてもらうことは、何物にも代えがたい私の「財産」になっています。 人と話すことで自分の世界が広がり、接客の引き出しがどんどん増えていく。だからこそ、私にとって接客業はただの「モノを売る仕事」ではなく、人生の面白さや新しい発見をたくさんもらえる最高のラッキーな仕事だと思っています。お客様に良いお買い物をしていただくことはもちろんですが、その人と過ごす時間そのものが楽しくて、お互いの「好き」を共感し合える空間を作ること。それが私の接客術の根底にあるように感じます。構成・文:馬場真由写 真:清水洋延