このコラムの要点ものの見方を変えれば、たくさんの価値が見えてくるコロナ禍は交代ではなく、私たちが次のステージに進化するよい機会である非接触型の販売で、新しい手法やマーケットが見えてくる今日は日々、販売のお仕事に携わっている皆様に向けてのお話です。二年ほど前からコロナというものが世の中に蔓延しだして、私たちの生活は大きく変わりました。いまや「非接触」というのが時代のキーワードになりつつあり、なるべくモノには触らない、支払いもキャッシュレス、そして人同士の接触も最小限にしましょう、と。この制約は、皆さんの「販売」、というお仕事にとってまさに脅威、いや命取り、もう自分の仕事は詰んだ、と思った方も少なくないのでは、と想像します。「人と人が対面してこその販売なのに、それがダメだと言われては…」確かに。おそらく多くの皆さんは、人が好きで、接客が好きでこの仕事に就いたに違いないのですから。そこでお伝えしたいのは「ものの見方」という考え方です。これは簡単に言うと「目の前で起きていることのとらえ方」。私たちは普段意識していませんが、ほぼ反射的に「これは悪いこと」「これはいいこと」というように目の前の出来事を定義づけしています。でも、その根拠となっているものは自分のこれまでの経験や、生きている中で身につけてしまった価値観。それらは再度定義し直し、新しい意味を自ら作り出すこともできるのです。コロナ禍は、多くの人にとって災難であり、もちろんこれが無ければよかったことは疑いの余地はありません(コロナ=悪)。しかし、中にはコロナ禍をきっかけに仕事の幅ややり方を広げる機会に変えている人たちもいるのです(コロナ=機会)。「ものの見方」を変えれば、コロナによって後退しているのではなく、むしろ人類は次のステージに向けて進化しているようにも見えます。販売という仕事も、「ものの見方」を変えればこのコロナ禍をきっかけに進化しようとしています。いままでは店頭に来たお客様だけにアピールという手法でしたが、SNSで販売員さんが発信をしたり、お客様は自宅にいながらオンラインで接客をして、商品を選んで頂いたり(なかにはランドセルまで!)、また一般人が、YouTuberを使い、商品を自分で仕入れて、テレビ通販さながらに自分で服を着てアピールして、それが売れるという方法もあります。インターネットを使って「非接触型」という制約を逆手に取れば、少ない時間でより多くの人に商品の情報を届けることができるようになるわけですね。ということは、皆さんのお客さんが、リアルの店舗だけから、一気に日本中、いや世界中にと広がるわけです。いままで季節が終わって在庫処分していた冬物も、季節が真逆な南半球のオーストラリアではこれからが冬なので、そちらで売れるかもしれません(笑)なんとエキサイティングなことでしょうか!このように販売のお仕事は、まだまだ進化できる余地がたくさんあるはずです。皆さんの携わっている販売というお仕事も、例えばプラスが見つかる眼鏡をかけて、そのメガネを通してみると、実はたくさんのスキルに気づくことができます。初対面の人に声をかける物おじしない積極性にはじまり、人の観察力、提案力、マルチタスク力、カラーコーディネート、ディスプレイのノウハウ、さらにマネジャー側に回れば、部下の育成、売上予測、在庫管理や商品発注等々、多くの能力を獲得できる魅力的な職種です。そして今後、オンラインでの仕事が増えてくれば、自分で動画を撮影、編集したり、ネットで配信したり、オンラインツールを使いこなしたりと、来たるオンライン時代に不可欠なスキルも取得できるチャンスに満ち溢れているように思えます。いま販売の世界でもどうコロナ禍に対応していけばいいかを模索している最中ですが、その中で皆さんはある意味トップランナー。あとに続く人にとって、皆さんの叡智が頼りなのです。ぜひ「ものの見方」を変えて、販売の新しい価値を見つけてくださいね。 文:川村透 (ものの見方アドバイザー/組織活性化コンサルタント/翻訳&執筆家)東京生まれ。上智大学経済学部経営学科卒。プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社(現プライスウォーターハウスクーパース)を経て独立。その後、自身がアメリカで見つけた本の翻訳の際、断られ続けるも、21社目でようやく出版にこぎつける。これをきっかけに独立し、川村透事務所を設立。ビジネス書の翻訳や執筆多数。 自身は元々吃音があり葛藤し続けたが、「ものの見方」を変えるという視点に出会い、これを克服。その原体験を元に「ものの見方」メソッドを確立。現在は組織が抱えるテーマに取り組み、モチベーション、組織活性化などのテーマについて全国で研修、講演を行っている。