SDGsってなに？最近、SDGs（Sustainable Development Goals＝持続可能な開発目標）のアイコンを見かけませんか？（図1）SDGs（エスディージーズ）は、2030年までに解決すべき様々な課題に対する17の目標と169のターゲットで構成されています。2015年9月国連サミットで「誰一人取り残さない」を基本方針として採択された世界共通の目標です。（図）SDGsの17の目標（出典：国際連合広報センターウェブサイト） 具体的にどんな目標があるのでしょうか？大きく分けると、「環境」と「経済・貧困」の２つのテーマに分けられます。 環境的な側面に関わるものとして、「目標６：安全な水とトイレを世界中に」「目標７：エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「目標１２：つくる責任、つかう責任」「目標１３：気候変動（地球温暖化）に具体的な対策を」「目標１４：海の豊かさを守ろう」「目標１５：陸の豊かさを守ろう」などがあり、これらの目標は相互に密接に関連しています。 また、「経済・貧困」に関わるものには、「目標１：貧困をなくそう」「目標２：飢餓をゼロに」「目標３：すべての人に健康と福祉を」「目標８：働きがいも経済成長も」「目標１０：人や国の不平等をなくそう」などがあります。 では、誰がSDGｓの１７の目標実現に向けて行動するのでしょうか？ それは、先進国も途上国も関係なく、世界の国々や自治体、企業、そして私たちの一人ひとりの主体性に任されています。SDGsは、地球上のすべての人が参加すべき取り組みです。企業の場合は、事業活動を通してSDGsの実現を目指すことが求められます。CSR（社会貢献活動）は、河川の清掃や植林ボランティアなど会社の本業とは切り離された形で行われてきましたが、SDGsの達成を目指す上では、自社のサービスや製品ごとにSDGsの目標を絞りこむことがポイントです。すでにアパレルやコスメの多くのトップブランドが、複数のSDGs目標の同時達成を目指しています。 なぜSDGｓがつくられたの？そもそも、なぜSDGsという世界共通の目標がつくられたのでしょうか？それは、地球上で暮らす私たちが、簡単には解決できない多くの課題に直面している現状があるからです。たとえば、地球温暖化問題、世界的な森林減少や水資源の不足、生物多様性の危機、廃棄物問題、貧困問題、食糧不足、人権問題、性差に基づく偏見や不平等など、困難な課題が山積しています。 課題の一つ、廃棄物問題を取り上げます。近年、海洋プラスチックごみ問題が深刻化していることをご存じですか？年間800万トンのプラスチックごみが投棄され、世界の海岸に漂着するごみの8割以上はプラスチックと言われます。世界でリサイクルされているプラスチックはわずか９％に過ぎません。現状のペースでは、2050年年までに120億トン以上のプラスチックが埋立や自然界に投棄され、魚より廃棄プラスチックの量が多くなるという予測もあります。 これらのグローバルな課題に目標を立てて、世界のみんなで取り組み、2030年までに解決していこうというのが、まさにSDGsがつくられた理由です。 SDGｓの目標実現をめざす！多くのアパレル企業や化粧品会社では、販売する製品の原料の調達、生産過程から廃棄まで、地球環境に配慮しながら製品をつくる取り組みが進められています。ライフサイクルで地球温暖化の主な原因である二酸化炭素（CO２）排出の削減目標を定めたり、海洋プラスチックごみ問題を軽減するため、環境対応パッケージの開発を行うなど、SDGsの実現に向けた様々なアクションを起こしています。 植物や水などの自然環境は、私たちの社会経済を支えています。地球上の自然資本があってこそ、素敵な衣服をつくることができるし、美しい肌に整えるコスメをつくることができます。SDGsに取り組むことは、自分以外の誰かの幸せを願い、より良い未来に向けて行動することです。あなたもSDGsの１７目標に対して、何ができるか考えてみませんか？ 文：松本真由美氏（東京大学 教養学部環境エネルギー科学特別部門 客員准教授）専門は環境・エネルギー政策論、科学コミュニケーション。研究テーマは、「エネルギーと地域社会」、「環境・エネルギー政策の国際比較」「企業の環境経営動向」等、環境とエネルギーの視点から持続可能な社会のあり方を追求する。上智大学外国語学部在学中から、TV朝日報道番組のキャスター、リポーター、ディレクターとして取材活動を行い、その後、NHK BS1でワールドニュースキャスターとして6年間報道番組を担当。2003年以降、環境NPO活動に携わる。2008年5月より研究員として東京大学での環境・エネルギー分野の人材育成プロジェクトに携わり、2013年4月より現職。東京大学教養学部での学生への教育活動を行う一方、講演、シンポジウム、執筆など幅広く活動する。