現在、店舗では新型コロナウィルス感染対策が欠かせません。お客様やスタッフの健康と安全を守るために、対策としてできることは何か。長く病院など感染対策が重要な現場で掃除という側面から健康を守ってきた松本忠男さんにお話を伺いました。松本忠男氏健康を守るお掃除士プロフィール (株)プラナ代表取締役社長、ヘルスケアクリーニング(株)代表取締役社長。 東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケア(株)を経て、亀田総合病院のグループ会社に転職し、清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントや営業に従事。1997年、医療関連サービスのトータルマネジメントを事業目的として、(株)プラナを設立。 これまで現場で育ててきた清掃スタッフの総数は700人以上。現場で体得したコツやノウハウを、多くの医療施設や清掃会社に発信する。 2019年1月からは、中国の深圳市宝安区婦幼保健院(1000床病院)の環境整備を指導するなど、活動の場は海外にも広がる。新型コロナウィルス感染対策として、もうひとつ覚えておいていただきたいのは拭き掃除の仕方です。拭き方はとても重要です。 新型コロナウィルスの感染が拡大してから、拭き掃除をするときにアルコールを使っている方も多いと思います。ですが、アルコールで拭くだけでは、感染予防をすることはできないのです。 例えば、お店のテーブルの上には乾燥した微細なごみ、水分や油分を含んだ汚れ、細菌など様々な汚れが存在します。そのため拭き掃除には、目的に応じて洗剤など使うものを変えなければいけないんです。 大きく分けると、4つの拭き方があります。 カラ拭き何もつけずに拭く。表面の乾いた汚れやウィルスのみ、取り除くことができる。水拭き水で濡らした布などで拭く。水に溶ける汚れなどを取り除くことができる。洗剤拭き洗剤をつけた布などで拭く。水に溶けない油性の汚れなどを取り除くことができる。アルコール拭きアルコールをつけた布などで拭く。溶剤なので、たくさんの油汚れなどを溶かしてしまうことでウィルスを汚れが包み込んでしまい、アルコールがウィルスにいきわたりにくくなる。そのため、汚れの内部に残っているウィルスまでは除去できない。 ウィルス感染を防ぐためには、ウィルスに直接アルコールが接触しないと効果が出ません。ですから、できるだけアルコールで拭く前にウィルスや汚れを減らしておくことが重要なポイントです。ぜひやっていただきたいのは、カラ拭き後、アルコール拭きをする。アルコール拭き後、カラ拭きをする。のどちらかの方法です。 ウィルスや汚れは、取り除くということをしない限りは減りません。実はアルコールで拭いただけだと、そこにいろんな汚れやウィルスが混じって、溜まっているだけの状態なのです。改めてカラ拭きで取り除くか、先にカラ拭きで取り除き、ウィルスを減らした状態で、アルコールで拭き、アルコールをウィルスに接触させるというのが、感染防止には有効です。 また何を使って拭くかということと同じくらい大切なのは、拭き方です。大きく弧を描くように拭いてしまうと、汚れやウィルスを広げてしまうだけで、取り除くことにはなりません。おすすめは一方向でS字を描くように拭いていくことです。一方向でS字に拭いていけば、汚れやウィルスと接触するのは常に同じ部分になりますから、汚れを端から端へ運んでいくかたちとなり、しっかりウィルスを取り除くことができます。 S字に拭くのはなかなか大変なのですが、布を四角ではなく、三角に折ると手首が回しやすくスムーズにS字に拭くことができるようになりますよ。拭いた後の布は、よく折り返して別の面を出してお使いになる方が多いと思います。しかし、それはおすすめできません。拭いた後の汚れた面を手で触ることになるため、接触感染のリスクが高まる可能性があります。一度拭いた布は、すぐ洗剤で綺麗に洗いましょう。 ただ、お店ではお客様がご来店した都度、拭き掃除をすることは、難しいと思います。その場合は、接客後に使い捨てのペーパーなどで都度カラ拭きをしておき、閉店後にアルコールを使ってしっかり拭いていただければいいと思います。 また手を洗うというのは、とても有効な感染対策なので、手を綺麗にしておくことは大切です。おもてなしのひとつとして、ご来店されたお客様におしぼりをお渡ししたり、旗艦店であれば感染対策であることをご説明し、洗面所をご案内して手を洗っていただくのもよいかもしれません。 ウィルスは、“減らす”ということがセットになっていなければ、拭いたとしても必ずそこにあります。“減らす”ということを意識して、正しい換気や拭き掃除などを行い、お客様もスタッフも安心してお買い物ができるお店づくりをしていただけたらと思います。 文:馬場真由香(JASPA事務局)写真:清水洋延(JASPA事務局)