全国に緊急事態宣言が出され、学校の休校も続く中、お子さんの教育に関する悩みも多いことと思います。今回は小学校低学年のお子さんをお持ちの販売員さんに参考になる休校中の学習について、学びの専門家である永堀宏美さんにお伺いしました。永堀さん曰く、大切なポイントは4つ。ひとつずつ、解説していただきましょう。*************************************************************************************************1.家庭での学習環境を設定しよう休校中の家庭学習については保護者からの嘆きの声がSNSにも溢れていますが、無理ないことです。なぜなら家庭は学校ではなく、いま課される家庭学習は、学校教育の補完的役割だった従来のそれとは異なるからです。本来、家庭は子どもにとっては家族とリラックスし、心身を癒す場です。学習のために最適化された構造環境(校舎・教室)で教えるトレーニングを受けたプロ(先生)の下で、同級生たちと学び合う場(授業)もありません。まず必要なのは、家庭内で学習に集中できる環境を設定することです。 2.短期決戦:集中タイムの設定と一日のメリハリ①集中タイムの設定集中力やモティベーションを高める「ポモドーロ・テクニック」(人間の最大の生産性と効率性を引き出せる時間は大人の場合25分のワークタイム+5分の休憩タイムの組み合わせ)がお勧めです。子どもの場合は各自の個性や体調に合わせて、例えば漢字や計算練習は毎日20分(15分のワークタイム+休憩5分)×2回にするなど、集中タイムを設定しましょう。もし学校の時間割通りに進めたがる場合は、それも尊重し、試行錯誤しながら最適化してください。②集中タイムの決め方「自分で決める」は、子どもの自立心や持続力、忍耐力の育成にも繋がりますので、親が一方的に決めてしまうのではなく、できるだけ子どもと相談して自身に決めさせましょう。もし難しいと感じたら、選択肢をいくつか提示して選ばせ、子どもが「自分で決めた」と実感できるよう導いてください。③一度決めたスケジュールが上手くいかない時叱る言葉をぐっと堪え「どうしたらできるようになると思う?」と子どもの気持ちを引き出します。「できなかった」は「できる方法にまだたどり着いていない=方法を変えればできるようになる」ととらえ、新たな選択肢を提示するなどして「これならできる」やり方を見出し、そこから再スタートしてください。大事なのは、子どもの個性に合った学び方や時間管理術を見出し、その成功体験を積み重ね自信をつけることです。④音による環境設定学習や生活の習慣化&集中力発揮には、音による管理も効果的です。例えば、キッチンタイマーや学校のチャイム音のアプリなどを活用し、科目や朝の始業、休み時間等で数種類のチャイム音を使い分けるなどして、お子さんと一緒に決めてみてください。⑤集中タイム以外はフリータイムにして一日のメリハリをつける集中タイムをより効果的に生かすには、メリハリのある過ごし方がカギです。ただし、オンラインゲームやYoutubeの視聴制限などは家族で話し合って最善の方法を決めましょう。⑥できたことを認める言葉掛け親の目はつい子どもの欠点に向かいがちですが、承認欲求を満たすことで学ぶ意欲も高まり、能力も伸びやすくなり、自己肯定感を高め失敗にも挫けないたくましい心を育てます。できれば1日1回は「できたこと」に着目し、認める言葉を掛けてください。いつか成長して世間の荒波を一人で乗り越えていく、その基礎を築くのはいまです。*ただし、本心ではない「煽(おだ)てる」言葉は逆効果です。子どもは大人の本心を敏感に感じ取ります。どうかしっかり観察し、褒める・認める種をたくさん見つけ出してください。3.親子コミュニケーション塾のススメ日ごろから販売員として接遇や苦情対応など、多様なコミュニケーションを駆使されている皆さんだからこそ、伝えられることがあります。お店屋さんごっこやブティック店員なりきり劇場など、遊びの中でお子さんと楽しみながら、さりげなく販売のコミュニケーション・テクニックを伝授してみてください。コミュニケーション力は未来のIT時代を生き抜く必須能力であり、家庭内でそうした機会を得られれば、貴重な財産となって子どもの中に残ります。4.親も子も頑張りすぎない小学校低学年の子どもは、まだ上手く気持ちを言葉にできないことも多々あります。不安や恐れという目に見えない怪物に心が呑まれないように、頑張りすぎないことも大事です。親子ともにしっかり睡眠・食事・運動を確保して体力を温存し、たくさん笑って免疫力をアップさせ、心身を護ってください。 文:永堀宏美 早稲田大学大学院教育学研究科 非常勤講師/一般社団法人 シッティングスポーツ協会 監事慶應義塾大学法学部卒業後、国際協力・青少年活動への参加を経て、内外政策研究会に勤務後、筑波大学大学院地域研究科修士課程に進学、修了後に米国コーネル大学大学院都市地域政策科に留学し修士号取得。帰国後は子育てと自らの学びと活動の両立を目指し、人財育成研修講師として活躍。子育て支援やグローバル教育に関する講座やシンポジウムにも多数登壇。平成13年から子育て中の母親として茨城県牛久市教育委員及び委員長を務め、平成21年から早稲田大学大学院教職研究科(現・教育学研究科)非常勤講師を務める。近著に『保護者トラブルを生まない学校経営を保護者の目線で考えました』(教育開発研究所・刊 2018)