~Vol.3 最高の顧客体験を実現するために。顧客満足と顧客感動を考える~今までのコラムで、最高の顧客体験はファンを作る機会であるとお伝えしました。そこで第3回目の最終回は、最高の顧客体験を実現する為に必要な“ファン作りの機会を創り出すこと“について深掘りしていきましょう! ●顧客満足とはなにか?まずは、ファン作りをする上で、欠かせない学びのポイントは、顧客満足と顧客感動の違いについてです。顧客満足は、CS(カスタマーサティスファクション)と言います。世界中の企業が顧客満足の指標を作り、顧客満足“度”を100%に近づけようと努力をしています。企業がお客様に対して製品やサービスを提供することによって、その顧客のニーズや要求がどれくらい満たされるのかを数値化し、どれくらい要望を満たしたかでその質を判断します。 この顧客満足という言葉ですが、昔と今とでは、“意味”が少し違ってきているように感じています。50代より上の世代と最近の若い世代が使う意味、その時代の状況が全然違います。昔は“企業主導型”といい、自分たちの技術で、商品やサービスの少ないラインナップから、大量生産して、顧客満足度を上げていた状態です。昔テレビの視聴率がとても高かったということを知っている人も多いのではないでしょうか?この前提には、商品やサービスの利用経験において、“他”をまだ体験したことがない状態です。お客様自身の情報、体験が乏しいということです。つまりテレビのゴールデンタイムは「8時だよ、全員集合」だけを日本中の人が見ていた時代です。 今は“顧客主導型”といい、お客様のニーズが多種多様になり、そこにあわせた商品、サービスラインナップを企業が試行錯誤しながら提供していくことが大事な時代です。顧客生活が豊かになり、多くの情報を手に入れ、利用経験も多くあるということが、背景にあります。インターネットを開けば、情報がたくさん溢れており、顧客はたくさんある情報の中で、興味ある好きなものだけを取得している状況です。皆さんもYouTubeなどで、好きな動画だけを選んで視聴していますよね。動画が溢れているのに、顧客は自分が見たいものだけをみるんです。一人ひとり、好きなものが違うので、番組も多種多様なニーズに合わせて制作側も意識して作ります。昔は、知らないから、情報の取得が難しいから、体験ができないから、限られた条件の中で体験したいからという動機で購入していましたが、今は“欲しいもの=好きなもの”だから購入する。なので、顧客がどうしてもこの店、場所でなければ嫌だとか、そこに行って初めて体験することができる、唯一無二という状況です。ですから、今の時代のファン作りは、“それじゃなきゃ嫌だ!”“そこの〇〇だから好き!”というお客様をたくさん増やしていくということなんです。 まさに、私が働いていたディズニーリゾートやユニバーサルスタジオジャパンという存在は、そうした意味ではとても顧客から選ばれ続ける要素がたくさんあります。ディズニーでしか、ユニバーサルスタジオジャパンでしか体験できないことを意識して顧客に対し発信していますし、提供しているからこそ、価格競争にも巻き込まれず、自社独自のサービスを顧客が受け入れて、リピートして頂けるファンになってくださっているのです。 ●顧客から個客へ最近、顧客体験はどんな時代に入ってきたのかというと、“カスタマーからパーソナル”の時代になっています。お客様の趣味趣向に合わせて、カスタマイズし、アジャストし、接客もちょっとずつ変化を加えながら、「顧客に幸せになってもらう」「楽しんでもらう」「喜んでもらおう」と、目指すのが“パーソナライズ”の考え方であり、やり方です。10名の団体様という接客ではなくて、10名様の内の一人は、〇〇様。〇〇様は、言葉はゆっくりはっきりと、足元を気をつけながらご案内するなど一人ひとりに対して、どのように接客をしていくのかをプランし、その人にあったものを提供する。例えばハンバーガーファストフード店舗にて、ハンバーガーのピクルスを抜いてほしいとか、ハンバーガーソースを足してほしいとか、ソースもケチャップではなくチリソースなどのソースで足して欲しいなど、“個客ごと”の対応をしなければならないということです。“個客”は、自分の嗜好に合ったニーズの商品・サービス体験を買うんです。この個客満足の捉え方が変わった延長上の、今は“個客感動”を狙っていかないと生き残れない時代なんです。 ●個客感動とは?最後に、「個客満足と個客感動の違い」をお伝えします。“満足”とは、満たされること、満ち足りるということです。これは頭で理解するという特徴があります。一方“感動”とは、「印象に残ること」が大事です。「心で感じる事」を指します。例を出すと、お腹がすいたので、いっぱい食べて「あぁ、満足!」。スマートフォンが壊れたので、新しいものを買った。「あぁ、満足!」これは満足です。 辛い商品を食べているお客様が、めちゃくちゃ汗をかきながら食べていたので、言われる前にお水をお持ちした。この後に何が起こるのかというと、言動が「ありがとう!」とお客様の一言に変わります。このお客様は、辛いから水を飲むペースが速いので、言われる前に水を注いだ。よくあるのが、お水を欲しそうだから、お水をもっていきますよね。そして、「ありがとう!」と言われるのですが、2杯目以降にお客様から「すいません、お水ください」と言われてしまうことが、よくあるんです。それ、もったいない、めちゃくちゃもったいないんです!「ちょっと飲むの早いよね、、、」とわかったら、言われる前に注ぐ。そうするとお客様から「このお店、スタッフの〇〇さんってよく気づいてくれるよね」と気が利く存在として「ありがとう」がさらに増えますよね。丁寧だなという印象が増え、笑顔が増え、結果として、お店の良い印象(個客感動)からファンになることになります。 “言われる前”に動く為には “個客の観察の中から”こうしたら喜んでくれるだろうと考えていることが重要で、それがマニュアルを超える“感動”に繋がります。個客の“印象に残ること”=“感動してもらうこと”ということなのです。今後、お客様に1mmでも感動を提供してほしい、つまり“印象に残ること”を生み出して欲しいんです。それは商品作り、サービス、お店の清掃など、日常業務の中にできることはたくさんあります。接客でもそうです。お客様の“印象に残ること”が、いかに大事なのかをわかっていて欲しいのです。是非とも皆さんのお店でもたくさんの顧客感動を生み出し、ファンづくりにつながる最高の顧客体験を創造してください。期待しています! 文:今井千尋(株式会社ワンダーイマジニア 代表取締役)神奈川県出身。専門は ホスピタリティサービス ・ リーダーシップ・チームビルディング・コミュニケーション・テーマパーク流人材育成・テーマパーク流人材開発 。 株式会社ワンダーイマジニア 代表取締役。東京ディズニーリゾート、ユニバーサルスタジオジャパン元人材育成トレーナー/人事・人材育成担当。日本の人事部主催“HRアワード”入賞作品「Disney&USJで学んだ現場を強くするリーダーの原理原則 内外出版」など著書多数。テーマパーク流人材育成・人材開発メソッドを基に執筆、講演、研修、人材開発コンサルティング(人材育成、人材開発の仕組みづくり)などを全国クライアント企業にて実施。全国にファンも多く、日々、現場の活性化の為に飛び回っている。 ▼株式会社ワンダーイマジニア https://wonderimagineer.com/