~Vol.2 顧客体験の中心にあるものとは?~●ホスピタリティの階段サービスというのは、お客様にとっては“当たり前にしてもらえる”と期待していることであり、対価に対する基準なので、その当たり前がなっていないと“お金を払っても損した気分”になります。そして、おもてなし(ホスピタリティ)は“歓待の精神”なので、「もっと喜んでもらおう」「もっと悩ましいことはないかな?」と相手の立場に立って、行動や言葉に表すことを“おもてなし(ホスピタリティ)”ということを第1回目でお伝えしました。そのサービスとおもてなし(ホスピタリティ)ですが、「階段」をイメージしていただくともっとわかりやすくなると思います。下段がサービス、次の段がおもてなし(ホスピタリティ)です。(編集部注:ここからは、サービスとおもてなしが区別しやすいよう、おもてなしをホスピタリティのみの表記とさせていただきます。)サービスという状態を完全に表現できて、初めて次の段に上ることができる。下段が上段を支えているので、サービスが不足、劣化していたら、次の段へは上れないという理屈です。もう少し丁寧に説明するとサービスという当たり前に私たちが提供するレベル(このレベルを下回ると、頂いている金額に対するサービスが提供できていない、劣化しているという状態)がしっかりと提供できており、その上でサービス提供側が、もっとお客様視点やニーズに寄り添う積極的なお客様主体のサービスを提供していくというのが、ホスピタリティの段階です。 テーマパークの事例で説明してみましょう。アトラクション利用の合間にファーストフード店舗にランチにいらっしゃったゲストに対して、「一秒でも早く提供できたら、パークでさらに時間を有効に使い、喜んでもらえるかもしれない(ファーストフードを利用される方の中には、手軽に時間をかけずに食べたいというニーズがある)」と思い、迅速且つ、適切に提供する“サービス”が、“ホスピタリティ”です。その前提には、正しい商品を最低限の適切なサービスで正しく出すという“土台となるサービス”があります。これは、やはりとても大事ですよね。スタッフが呼んでも来ない状態にもかかわらず、相手の立場に立って、喜んでもらおうと行動しようとしても、そのそも土台のサービスがない状態なので、「その前にやることがあるだろう!!(怒)」という感情が、当然ゲストの心の中に湧いてしまいます。つまり、ホスピタリティの前に、きちんと“土台になるサービス”をしましょう、ということなのです。 ●ユーモア=顧客体験を通して、ファン作りを目指そう!前回のコラムで触れた“ユーモア”は、ホスピタリティの更に上の段階になります。サービス、ホスピタリティがしっかりと再現された前提で、発揮されるものです。この段階にいるトップレベルの人は、“ファンを増やす”ということに意識が向き、行動できています。こうした最高の顧客体験によりファン作りの機会を創り出すことを“ユーモア=遊び心(お客様をより楽しませる探求心)”と呼んでいるとお伝えしました。ユーモアは言い換えれば、“その人らしい観察から生み出される相手を楽しませる対応”と言えます。 このユーモアのあるトップレベルの人は、ちゃんとその場の基準に相応しい提供スピード、ゲストが求める必要最低限の“少し上のレベル”を意識し、サービスを考えています。お客様を観察し、“目配り”“気配り”“心配り”からの気づきを得て、ユーモア=遊び心(お客様が思わず笑顔になり、印象深い思い出になる出来事の提供)につなげることが上手なのです。ユーモアは、笑わせることではなく、お客様にとって、ちょっとした嬉しいことや楽しいこと、感動するなどの“プラスの印象に残ること”を発見する能力です。これをして差し上げたらお客様の想像を越えて、もっと喜んでもらえるなということや思わずお客様が笑顔になるだろうなということ、ご自宅に帰って家族や友人に話したくなる“プラスな印象の顧客体験”を常に相手を観察し、研究し、再現するための知識と技術を研ぎ澄ませているのです。 では、そのユーモアを身につけて最高の顧客体験を実現し、ファンを作るためにはどうしたらよいのか。それは次回3回目で詳しくお話ししたいと思います。 文:今井千尋(株式会社ワンダーイマジニア 代表取締役)神奈川県出身。専門は ホスピタリティサービス ・ リーダーシップ・チームビルディング・コミュニケーション・テーマパーク流人材育成・テーマパーク流人材開発 。 株式会社ワンダーイマジニア 代表取締役。東京ディズニーリゾート、ユニバーサルスタジオジャパン元人材育成トレーナー/人事・人材育成担当。日本の人事部主催“HRアワード”入賞作品「Disney&USJで学んだ現場を強くするリーダーの原理原則 内外出版」など著書多数。テーマパーク流人材育成・人材開発メソッドを基に執筆、講演、研修、人材開発コンサルティング(人材育成、人材開発の仕組みづくり)などを全国クライアント企業にて実施。全国にファンも多く、日々、現場の活性化の為に飛び回っている。 ▼株式会社ワンダーイマジニア https://wonderimagineer.com/