~Vol.1 最高の顧客体験を実現しているテーマパーク流お客様サービスとは?~ ●サービスとおもてなし(ホスピタリティ)の違い最高の顧客体験についてお話しする前に、知っておいて欲しいことがあります。みなさんは、サービスとおもてなし(ホスピタリティ)の違いを理解しているでしょうか?サービスとおもてなしは、似ているようで、実は全く違います。しかし、私たちは時に何が違うのか、わからなくなってしまうことが多くあります。サービスとおもてなしを同じだと捉えてしまう理由は、特に日本ではサービスとおもてなしが融合していることが多いため、違うと感じる人が少ないこと。またお客様もそうした状態を求めていることが多いので、同じに見えてしまうからです。しかし、ホスピタリティサービスを生業としているテーマパークでは、この2つの違いをしっかりと理解し、現場でどのように活かしていくのかが、とても大事です。それは、皆さんの働くお店でも同じことです。第1回目は、このサービスとおもてなし(ホスピタリティ)の違いについて、詳しく考えてみたいと思います。●お客様が“サービス”に対して求めていることとは?“サービス”とは何か。例えば、1,000円のあんかけ焼きそばがあったとします。それに1,000円払い、食べた時にお客様が「よかった!」と感じる。この一連の流れがサービスです。つまり、この焼きそばには、1,000円の価値があるということです。では、「1,000円の価値がなくなる瞬間」とは、どんなときでしょうか?「美味しくない」「盛り付けの量が少ない」「冷めている」などでしょうか?もし、そんなことがあったら、“損した気分”になりますよね?そう、『サービスは、劣化すると損した気分にさせてしまう』んです!これがポイントです!ですからサービスでは、1,000円の商品であれば、1,000円分の価値をしっかり伝えていかなくてはならないということです。つまり、1,000円という金額を払って当然だという価値が、そのサービスになければいけないということです。別にプラスにする必要はありません。“お客様の当たり前が、当たり前にできているかどうか”ということなのです。テーマパークの場合、お客様は街場のお店で受けるサービス以上のことを期待されています。ですから、スタッフの笑顔やアイコンタクト、お声がけなどを含めて、期待をしっかり担保した内容を安定的に提供し続けるというのが、「サービス」です。きっと皆さんのお店でも、お客様は皆さんに対して期待しているレベルがあるはずです。まずはそのレベルがどこにあるのかを見つけ出すことからスタートし、それが安定的に提供できているのかどうかをチェックすることが必要です。●お客様がおもてなし(ホスピタリティ)に求めていることとは?おもてなし(ホスピタリティ)とは、サービスを提供する側の言動に対して、お客様との利害関係がありません。つまり、“対価”は関係ありません。これが、おもてなしの前提となる考え方です。おもてなし(ホスピタリティ)は、“歓待の精神”という表現を私たちはよく使いますが、「もっとお客様に喜んでもらおう」「お客様が悩ましく思うことはないかな?それをいち早く解決して喜んでもらおう」という心からの想いを行動や言葉に表すことです。●おもてなし(ホスピタリティ)が更に研ぎ澄まされると、どうなるのかお客様が当たり前と思っていることを当たり前に提供できるサービスができ、そして“歓待の精神”でのおもてなしができるようになる。そのおもてなし(ホスピタリティ)が研ぎ澄まされると、次の“ユーモア”という段階が見えてきます。ユーモアが実践できている人は、“ファンを増やす”ということが、できている人です。お客様がパークでとても素敵な感動できるような体験ができれば、そのお客様はきっとパークやその体験をさせてくれたスタッフのファンになってくださいます。トップレベルの人たちは、自然とそうした機会を提供し、ファンを作るということができているのです。つまり、最高の顧客体験とは、ファン作りの機会の創出であるとも言えます。この最高の顧客体験によって、ファン作りの機会を創り出す力を私たちは“ユーモア=遊び心(お客様をより楽しませる探求心)”と呼んでいます。おもてなし(ホスピタリティ)とこのユーモアに注力できる状態をできるだけ早く作ることが、最高の顧客体験に繋がる機会をより多く作ることもできるようになり、今よりお店や販売員のファンは増えていきます。そして、このおもてなし(ホスピタリティ)とユーモアは、お店でのお客様対応時だけやりましょうということではなく、日常生活の中で育んでいくものです。仕事以外でも、関わるすべての人たちに対して、「こんなことをやってあげたら喜ぶんじゃないか」という機会を探すことができれば、目の前の全ての人が、大切なおもてなしを学ばせてくれる人になるのです。テーマパークの現場で活躍している人たちも、特別なことをやっているわけではなく、どこにでも存在する“相手を想う気持ち”、“それを行動で表現する姿勢”、更におもてなし(ホスピタリティ)とユーモアを磨くために、日々行動し続けているのです。文:今井千尋(式会社ワンダーイマジニア 代表取締役)神奈川県出身。専門は ホスピタリティサービス ・ リーダーシップ・チームビルディング・コミュニケーション・テーマパーク流人材育成・テーマパーク流人材開発 。 株式会社ワンダーイマジニア 代表取締役。東京ディズニーリゾート、ユニバーサルスタジオジャパン元人材育成トレーナー/人事・人材育成担当。日本の人事部主催“HRアワード”入賞作品「Disney&USJで学んだ現場を強くするリーダーの原理原則 内外出版」など著書多数。テーマパーク流人材育成・人材開発メソッドを基に執筆、講演、研修、人材開発コンサルティング(人材育成、人材開発の仕組みづくり)などを全国クライアント企業にて実施。全国にファンも多く、日々、現場の活性化の為に飛び回っている。▼株式会社ワンダーイマジニア https://wonderimagineer.com/