先日4年ぶりにシリコンバレー視察ツアーを開催、サンフランシスコ市内やシリコンバレーのベンチャー企業、AI企業などを訪問して来た。 昨年11月のChatGPTの登場による「生成(ジェネレイティブ)AIブーム」の恩恵を受けたAI関連、ハイテク企業は成長を続け、シリコンバレーのアップル、グーグル、メタ(フェイスブック)周辺は各企業のオフィスが拡大され、それぞれ街のようになっていた。 米大企業400社の株価指数である「S&P500」ではアップル、マイクロソフト、アルファベット(Google)、アマゾン、エヌビディアの5社で時価総額全体の4分の1を占めており、今後発表される7〜9月期の決算でもこの5社の利益平均は34%増になると予想されている。 今GPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる画像処理装置のNo.1企業であるエヌビディア(Nvidia)社を視察したが、現在各社が競って作っているAIデータセンターに欠かせないエヌビディアのGPUは納品までに6ヶ月かかるものもあるという。 一方、サンフランシスコ市内は治安が悪化、ブランド品店などが集まるユニオンスクエア周辺でもホームレスを多く見かけ、高級ホテルなどがある坂を上がった地域でも歩道にホームレスのテントが張られていて驚いた。 ユニオンスクエアにほど近いホテルに宿泊したが、毎晩のように路上で騒ぎがあり、パトカーなどのサイレンも鳴らない日はなかった。 訪問中にスーパーのターゲットがサンフランシスコを含めて全米の9店舗を閉鎖、スターバックスがサンフランシスコ市内の金融街周辺店舗を7店閉鎖するというニュースが流れた。 サンフランシスコ市をはじめ米主要都市ではコロナ禍でのリモートワークの定着によりオフィスの空室率が高止まりしている。 サンフランシスコ市は今年第3四半期の空室率が33.9%ともされているが、ホテルから毎晩見ていたセールスフォースタワー(サンフランシスコで最も高いオフィスビル)にも空室が目立っていた。 オフィスビルの空室率上昇は固定資産の価値を下げ、税収減をもたらす。 サンフランシスコ市は7億8,000万ドル近い財政赤字のため多発している万引きなどの軽犯罪に対して警察が出動しない状況を生み、それにより閉店が加速する悪循環が生まれている。 LVMHの7〜9月期決算でファッション・革製品部門の売上が9%増とのこれまでのような二桁増に届かなかったことを受けて高級ブランドの株価が軒並み下落した。 リーバイスは6〜8月期の純利益が前年比94%減少、百貨店のメイシーズやスニーカー販売のフットロッカーも赤字を計上するなど中高級価格帯の売上が不調だ。 ゼロコロナ政策解除で経済の回復が期待された中国も、中秋節と国慶節の8連休で22億人が移動するなど観光客は増えたものの、一人あたりの支出はコロナ前の2019年に届かず、香港を訪れた観光客もエルメスなどの高級品よりもカフェで過ごすなどの傾向が出ている。 日本の百貨店売上高は8月まで18ヶ月連続でプラス(東京地区は24ヶ月連続)となっており、円安も手伝ってインバウンド消費も好調のようだが、不安を感じている。 この春日本では主要57品目の80%にあたる46品目が1年前より値上がりしたが、値上がりした品目の80%で販売数量が減少した。 消費者は収入が減ったり、商品が値上がりすると代替品を見つけて対応する。 欧米とは状況が違うものの、国内でも今後中高級品の販売に陰りが出てくることに備えておく必要があると考えている。 文:高島健一氏(新規事業コンサルタント/高島健一事務所代表)世界中、人が集まる場所に必ず足を運び、自分で買い、体験し、ヒット商品、成長事業を誰より早く探し出す異色の新事業コンサルタント。慶應義塾大学湘南キャンパスと全国の企業を結ぶインターネット研究会「コマース・アレー」、全国経営者の会「耳よりの会」主宰。最新の新商売、新製品、新技術、話題の新施設、新しい売り方などの情報を提供するセミナーは目がさめると大評判。