「新しい時代が来た」と感じ始めたのはコロナ禍前の2018〜19年頃だった。 2018年はタピオカミルクティーが翌年まで大ヒット、安室奈美恵が引退、ファッションネット販売の「ZOZO」が話題となり、AmazonEchoやGoogleHomeといった音声でタイマーセットしたり、天気予報を知る機器や声を翻訳する携帯翻訳機などがヒットした。 平成から令和へ元号が変わった2019年はラグビーワールドカップを日本で開催、PayPayなどQRコードによるスマホ決済やウーバーイーツ、暑さ対策のハンディーファン、ワークマンの急進と、その後のトレンドの先駆けとなるものが注目された。 東京オリンピックの開催でインバウンドが4,000万人を超えると期待された2020年は新型コロナウイルスの蔓延により一転、世界各国でロックダウンが始まり、日本でも緊急事態宣言が出されコロナ禍の時代に突入した。 オリンピックが延期され世の中の活動が止まったが、リモートワーク、遠隔授業、Zoom会議、宅配食事サービス、ネット購入、接触を防ぐためスマホ決済などが普及、部屋で過ごす時間が増えたことで部屋着やインテリア用品などが売れた。 欧米に1年遅れてコロナ明けした今年は円安もありインバウンド客が急増、猛暑もあってマスク率も急激に下がり、街の様子はコロナ前に戻りつつあるが、既に新しい時代になっていることに注意する必要がある。 今は「コロナ禍特有のもの」から平時になったための変化か、新しい時代の到来による変化なのかを見極めることが大事だ。 Netflix、ディズニープラス、Zoomなどの利用者が減っているのは在宅勤務が減り自宅時間が短くなったことが要因だし、キャンプ用品の売上減も同様と思われる。 今年に入ってからの食品、日用品、ガソリン代、電気代などの上昇による消費者の低価格志向もインフレによる影響かも知れない。 しかし、スマホ決済、リモート会議などは今後も使われるし、この夏休みの宿題に多くの生徒が使ったであろうChatGPTなどのAIチャットも当たり前のように使われると考えている。 今年はユニクロの「ラウンドミニショルダーバッグ」が世界的大ヒットとなったが、そのきっかけがイギリス・エジンバラに住む女性のTikTok投稿だったことや、令和言葉・奈良弁で訳した「愛するよりも愛されたい」という万葉集の現代語訳の本が10万部を超えるベストセラーになっていることなどは、「新しい時代の売れ方」を示唆していると考えている。 アメリカでは7月の動画視聴時間がネット動画配信38.7%、CA(ケーブル)TV29.6%、地上波20%となり、いわゆるテレビが50%切り、ネット動画が一番見られているメディアとなった。 一度に同じものを多くの人が見る「マスメディア」から都合の良い時間に好きなものだけを見る多様化が進んでいることの現れだ。 「新しい時代」は大量広告でヒット商品を作るのではなく、お客様がピンときたものが伝搬し売れてゆくのかも知れない。 そういう面では店舗での対面やネットの売れ行き状況から担当者が感じるものが一番大事になる。 始まったばかりの「新しい時代」を捉えるためには消費者と直接接する販売員の方々の感性とその情報をいかに活用するかが最重要課題だと思われる。 文:高島健一氏(新規事業コンサルタント/高島健一事務所代表)世界中、人が集まる場所に必ず足を運び、自分で買い、体験し、ヒット商品、成長事業を誰より早く探し出す異色の新事業コンサルタント。慶應義塾大学湘南キャンパスと全国の企業を結ぶインターネット研究会「コマース・アレー」、全国経営者の会「耳よりの会」主宰。最新の新商売、新製品、新技術、話題の新施設、新しい売り方などの情報を提供するセミナーは目がさめると大評判。