あなたは大好きな友人を自宅に招いたときに、どのようにおもてなしをしますか? きっと、損得抜きでできる限りのことをしてあげたいと思うことでしょう。タイトルにある“おもてなし販売”とは、来店してくださったすべてのお客様に、この最上級の“おもてなしの心”で対応することをいいます。 自分という販売員をひいきにしてくださるお客様(ロイヤルカスタマー)を増やしていくためには、 “おもてなしの心”が必要不可欠です。目の前の方を単なるお客様の一人と見るのではなく、自分にとって最も大切な方と思って接してほしいのです。 そのためにまずは日頃の“心がけ”を見直してみましょう。 “おもてなし販売”に大切な3つの心がけ目の前のお客様に心から“好意”を持つ “聴く力”で真のニーズを引き出す“売ろう”ではなく“お役にたとう” どれも難しそうで、実は簡単にできることばかりです。以下に詳しくご紹介します。 1.目の前のお客様に心から好意を持つお客様は様々なタイプの方がいらっしゃいますから、好感を持てる場合もあれば、苦手と感じる場合もあるでしょう。しかし、どんなタイプの方であろうと、初対面でも、お客様のことは心から好意を持って接してください。“好意の返報性”という法則があります。 「人は相手に好意を持たれると自然と相手に好意を持つ」というものです。販売員がお客様に対して好意を持って接すれば、お客様も販売員に好意を感じて心を開いてくださいます。もし逆に『このお客様は苦手』という感情を持つとそれもまたお客様に伝わりますから、心を閉ざされてしまいます。作り笑顔で隠してみても本心は見破られてしまうでしょう。本物のセレブほど、こうした見破り能力が高いものです。お客様に心から好意をもって対応することは、ロイヤルカスタマーづくりに繋がるだけでなく、販売成績をあげる最大のコツでもあります。 2. “聴く力”で真のニーズを引き出す売れない販売員に共通することの1つに、「お客様との会話が弾まない」という点があげられます。お客様に関心を持たず、一方的に自分が伝えたいことだけを喋り続ける・・・これでは売れなくて当然。ネットでなんでも買える時代において、販売員に求められる役割とは何でしょうか。お客様が探している商品や人気の商品をご案内するだけでは、もう販売員のいる価値はないかもしれません。時代に求められる販売員の役割は、お客様自身が気づいている以上の真のニーズ(潜在ニーズ)を引き出してさしあげることです。そのためには、話すより聴く力が大切。お客様の話に耳を傾け、質問を投げかけながらさらにたくさんお話をしていただく。そうすると、隠れていた真のニーズが表出されてきます。 お客様は思いがけないニーズに気づいてくれた販売員に「さすが、プロ!」と感動し、信頼を寄せてくださいます。そうなると 「これからも接客してもらいたい」とあなたという販売員をひいきにしてくださるロイヤルカスタマーに繋がっていきます。 3.“売ろう”ではなく“お役にたとう”私は以前、成績最下位の販売員でした。毎日、必死に販売活動をおこなったのですが、まったく売れず話すら聞いてもらえませんでした。もがき苦しむ中で、ある日ふとこんなことに思い当たりました。『ずっと、売らなくちゃ、売らなくちゃって躍起になっていたけど、自分がお客様だったらそんな販売員から買いたくないな。売ろうとするのではなく、お客様の役に立とうと考える販売員だったら警戒心を持たずにいろいろ相談できるし、そういう人から商品を買いたい。私がこれまでやってきたやり方はすべてマトハズレだったな・・・』と。その頃の私は、お客様に好意も持たず、一方的に喋りまくる一番嫌われる販売員だったのでした。その日から心がけを変えました。“売ろう”ではなく、“いかにお客様の役に立つか”ということに集中しました。お客様の話には真剣に耳を傾け、買っても買わなくてもお役に立つと思うことは損得抜きでおこないました。すると、これまで辛いと思っていた販売の仕事が楽しくなり、翌々月には成績がトップになっていたのです。心がけを変えただけで、販売のやり方も自然と変わり、そのうえ人生までも大きく変化していきました。 販売員の仕事は、単なるモノ売りではありません。お客様のお役に立ち、幸せに貢献することが役割です。「人を幸せにする人が幸せになる」とはオムロンの創業者 立石一真さんの言葉ですが、人にしたことが自分に返ってくるのです。 さて、以上の3つの心がけは、やろうと思えば今からでも直ぐに始められます。ですが、心というのはコロコロと変わりやすいもの。その日の気分でやったりやらなかったりでは身につかず成果も出ません。『おもてなし販売を迷わずやり続ける!』と強く決心し、毎日コツコツと実践していってください。きっと二、三ヶ月後には、『あなたに会いたい』と訪れてくださるロイヤルカスタマーが倍増しているに違いありません。 文:坂本玖実子(株式会社クラスモア 代表取締役社長)11年間の専業主婦ののち、40歳を目前にして外資系化粧品会社に営業管理職として再就職。内気で口下手な性格を克服し、飛び込み営業でトップクラスの成績を上げる。日本最大級の家具ショールームへ転職し、パートながら、1日に3,200万円を売り上げるなど、同社で驚異的な販売成績を記録。功績が買われパートから初の正社員に昇格し、最重要顧客を担当。その後、人材育成部門の管理職となり、全店1,800名の育成研修を指揮する。2008年 人財育成会社 株式会社クラスモアを設立、代表取締役社長。現在に至る。