販売職の皆様が接客の中で、時には苦手と感じるお客様がいらっしゃるかと思います。今回は、そんな苦手なお客様との付き合い方について、私の専門であるNLP心理学にもとづくヒントをお伝えします。※NLPとは: 言葉や行動によって人の思考・感情・行動をコントロールできるスキル体系のこと。人間の思考や心理を理解し、改善するための方法論として注目されており、コミュニケーションや人財育成などの分野で広く活用されている。販売員の方にとっては、お客様の気持ちやニーズをより正確に理解し、適切な提案をして、信頼関係を築くことに活用できる。まず、苦手なお客様との接客の前に、自分自身の心構えを整えることが大切です。つまり、自分が苦手意識を持っているお客様だからといって、接客態度を変えたり、態度で示したりしないことが大切です。とはいっても、そのような態度は無意識に起きてくるもの。そんなときに有効な考え方が2つあります。1つ目は、「ポジション・チェンジ」です。これは、お客様の立場に立って考えるということです。もしそのお客様がいつも無愛想なら、そのような態度をとらざるを得ない理由を、その人になり代わって想像してみるのです。「仕事でストレスにさらされている…」、「周囲の人が思うように動いてくれない…」、などなど。そして、その気持ちを実際に感じ、「無愛想」になってしまう体験をシミュレーションしてみるのです。そのような体験をしてみることで、苦手なお客様にとって最も有効なアプローチのヒントを見つけることができるでしょう。2つ目は、「解釈のコントロール」です。これは、自分の気持ちを前向きに保つときにも有効です。例えば、「お客様に不愛想な態度をとられた」ことから、「自分は嫌な仕事をしている」という解釈が起これば、自分のモチベーションが下がってしまいます。そんなときは、自分にとっても相手にとってもより良い解釈をしてみることが有効です。例えば、「お客様に不愛想な態度をとられた」→「自分には人間心理をより理解する機会がある」と解釈してみるのはいかがでしょうか。その後の自分の態度やモチベーションに変化をもたらせることを実感できるのではないでしょうか。次に、苦手なお客様との接客において、お客様の言葉遣いや表情、仕草などから、そのお客様が何を求めているのか、どんなコミュニケーション傾向を持っているのかを読み取り、相手に合わせて適切な対応をとることができます。ここでは、代表的なお客様のパターンと、それに対する接客のアプローチ例をご紹介します。 1.商品の知識が少ないお客様このようなお客様は、販売員の説明に対して不安を感じたり、不安を持ったりすることがあります。そこで、商品の特徴・他の商品と異なる点・メンテナンス方法などを丁寧に説明することが大切です。また、お客様自身が持っている疑問や興味に焦点を合わせ、それに対する答えを提示することで、信頼関係を築くことができます。 2.無愛想で口数が少ないお客様このようなお客様には、お客様自身が抱える問題や興味を質問で引き出し、共感することが大切です。お客様の関心事に答えるなかで、商品の特徴や価値を伝えるのです。お客様の個別の課題が、その商品によってどう解決するかを説明できるのがベターです。また、実際に商品を手にとっていただくことで、商品の良さを体感していただくように説明すると効果的です。 3.自尊心が強く高圧的なお客様このようなお客様には、まずはお客様の意見や要望に耳を傾け、共感することが重要です。その上で、商品の特徴や良さを伝え、お客様に納得していただくように説明することが大切です。ただし、こちらがお客様を無理に説得するのではなく、お客様が使う言葉を多用しながら、お客様自身が自分で納得するように、お客様の意見を尊重しながら会話を続ける姿勢が求められます。 以上、苦手なお客様との接客についてのヒントをご紹介しました。NLP心理学を活用し、自分自身の心構えを整え、お客様の特徴に合わせて接客に臨むことで、多様なお客様と円滑にコミュニケーションを図り、提案する商品を納得して買っていただくことが可能です。これからも、商品に対する熱意や知識を持ち、真摯に接する姿勢を持たれて、販売という素晴らしいお仕事でのご活躍をお祈り申し上げます。 文:二階堂忠春(一般社団法人 日本NLP能力開発協会 代表理事)1993年東北大学法学部卒業、1999年南カリフォルニア大学ビジネススクール修了。東北電力(株)、PwCコンサルティング等を経て、現職。デジタルハリウッド大学大学院客員教授、東北福祉大学特任准教授を歴任。人材教育や営業・販売に携わるビジネスパーソンを対象として、米国NLP協会認定「NLPコーチング」資格認定講座を開催中。 https://nlp-coaching.or.jp/