第九回目は、メールでのお客様対応のお話です。皆さんにも心当たりはありませんか・・? 私は長らく「カスタマーコールセンター」の仕事に従事している者です。今回は、私自身が経験した商品トラブルに対する対応をお話しします。大手通販会社で購入したばかりの楽器ケースが使えなくなりました。ケースを持ち運びするための持ち手の部分がベトベトになり、ハンドルを握ると手が黒くなります。このケースがとても気に入っていたので、早速販売会社にメールを送りました。持ち手の写真を添付し、同じ商品への交換か修理をリクエストしたところ、すぐに返信が届きました。メールには、丁寧なお詫びの言葉が添えられ、こんなことが書かれてありました。この商品は長く取り扱っていましたが、このようなことは初めてのことです。アルコールが付着した手で触った場合、このようなことになります。案内不足で申し訳ございません。商品は返品を承ります。 私はとてもショックを受けました。気に入っていた楽器ケースだったので、解決策が返品対応しかないことも当然悲しかったのですが、メールの返信内容があまりにも一方的だったからです。一体私は、返信されてくるメールに何を期待していたのか、あらためて考えました。先ず、そのケースに対する私の想いに「共感してくれること」です。確かに、商品が好きです!とメールには書きませんでしたが、商品交換/修理を希望しているところから、この商品を気に入っていることを察してくれると思っていました。次に、今回のことは「商品に起因するトラブル」として対応してくれること、です。アルコールを付けた手でハンドル部分を触ったことはなかったので、反論をしたい気持ちにもなりました。初めてのケースであるならば、なおのこと私のケースの使い方やベトベトになった経緯などを質問して欲しかったと思いました。私がこのメールを受け取って感じた会社の評価は★1つ。とても自社の商品を愛し、お客様を大切にしているとは思えません(ちなみに購入時には★4つ!です。とても丁寧な包装で配送も早かったので)。このメールに最も欠如しているのは、「お客様に対する興味」です。メールの中にあるお客様が選んだ言葉の意味、お客様の想い、どうしてこのケースを必要としているのかなど、想像をすることなく返信をしてきているのだと思いました。もしかしたら、実際は想像していたのかもしれません。でも相手に伝わっていない以上、私に対する興味はないのです。 近年、コロナの影響もあり、非接触型によるお客様とのコミュニケーションが増えているため、今回のようにメールでお客様対応をする機会も、多くなったと思います。メールの作成は、口頭でのコミュニケーションと異なり時間を要しますが、時間短縮のためにテンプレートなどを使って、複数のお客様に同じ文章を送ったりしていませんか。テンプレートを使用した文章は、内容を伝えることはできますが、「表情」がありません。店頭でお客様の対応をする際、販売員はお客様に笑顔で接し、積極的にお客様にお声掛けをして会話を盛り上げているはずです。メールも同じです。文章を通して、お客様に対して「笑顔」と「お客様への想い」を表現しなければなりません。そのために、まず「お客様に対する興味」を持ちましょう。お客様の気持ちを察する言葉、共感の言葉、そしてお客様を知ろうとする質問の言葉です。したがって、テンプレートを使ったような画一的な文章では表現することはできません。お客様(お客様の言葉)からお客様の気持ちとお客様が置かれている状況を想像し、そのお客様だけに合った言葉や表現に、カスタマイズしなくてはならないのです。人は誰でも、このような言葉を受け取ったら相手が寄り添ってくれていると感じませんか。まずは一つの文からスタートしましょう。相手に寄り添った言葉を一文だけメールに入れてみましょう。最初のうちは、初めの挨拶のあと、もしくは文章の最後が入れやすいと思います。それだけで、メールがワンランク温かみのある内容になります。 ところで、この楽器ケースのその後です。私は再度メールを送り、なんとか修理をしてほしいとリクエストをしています。二週間が経ちましたが、未だに返信はありません。